【書評】京大 おどろきのウイルス学講義

 昨年2月、都内で仕事があって、その帰り道、こんなことを言われました。「中国で物騒なウイルスが流行っているみたいですね。御社の中国の方は大丈夫ですか?」こう聞かれたとき、正直、SARSみたいにすぐ収まるだろうと全然気にしなかったことを覚えています。

 ところが、昨年3月上旬、会社では出張が禁止。下旬に在宅勤務が始まりました。事態は急激に変化して、世界中で「LOCKDOWN」。あれから1年。みなさん、with コロナには慣れましたか。最近、アメリカは、ワクチン接種が進んで、新型コロナウイルス征伐!みたいな雰囲気になってるようです。

 でも、本当に新型コロナウイルスはSARSみたいに一過性のものなんでしょうか。新型コロナウイルスが変異して強毒性ウィルスになって、世界を揺るがすことなんてないんでしょうか。今度は全く別の猛毒なウイルスが流行しないんでしょうか。

 1年経った今、ウイルスの世界を知る、いい機会な気がして、この本を手に取りました。

目次
1. 京大 おどろきのウイルス学講義
2. この本をおすすめの人
3. 本を読んだ感想
4. 参考図書

京大 おどろきのウイルス学講義

タイトル京大 おどろきのウイルス学講義
著者宮沢 孝幸
出版社PHP新書
本体価格930円

この本をおすすめの人

新型コロナウイルスの由来を知りたい方

アルコール消毒が新型コロナウイルスに有効な理由を知りたい方

With コロナって、いつまで続きそう?ってなんとなく不安な方

ウィルスって本当に悪者なの?ウイルスの隠れた役割を知りたい方

本を読んだ感想

ウイルスは決して悪者じゃないんだ。僕らの仲間だよ。

 本を読むとき、あとがきを楽しみにしている方!わたくしもその一人です。この本のあとがきにこんな事が書かれています。

本書で言いたかったことの一つに「ウイルスは決して悪者でない」ということがあります。

動物も植物も細菌もウイルスもすべて地球上の生き物で、相互に作用しながら生きています。本書に書いたように、ウイルスが無ければ、人も動物もここまで進化しなかったのです。

地球全体で一つの生命体であること、地球の生命体も宇宙と関わっていることを、ウィルスを通して認識していただければ幸いです。

京大 おどろきのウイルス学講義 あとがき

 この本で著者のウイルスに対する真摯でストレートな眼差しが感じ取れます。偏見を持たない。客観的に見る。よく知る。そして、この本を読むと、ウイルスが単なる病原性の悪者じゃなくて、他の様々な生物といろいろ関わりながら、地球上の豊かな生命を育む素晴らしい役割を果たしていることがよくわかります。

 人間はみんな死ぬのが怖いから、ウイルスの病原性にばかり気に取られ、新型コロナウイルスをやっつけよう!退治しよう!みたいなノリがあるけど、これって本当に正しいのかなって思っちゃいました。地球は活きた星です。

 様々な機会に自然は地球の環境を大きく変化させます。その環境変化に合わせて生命体が進化していくシステムの要素としてウイルスが機能していることをこの本は教えてくれます。そんな大きなスケールでみると不思議に新型コロナウイルス嫌いが和らいでくるんです。

ヒトはウイルスと共生していく

 毎年、インフルエンザは流行して、多くの方が亡くなっていきます。

2018年のインフルエンザによる死亡者数は、厚生労働省が毎年発表している人口動態統計によると3325人

インフルエンザによる年間死者数はどれくらい?コロナとの致死率の違いは?医師が解説します。 | CLINIC FOR

 同年、他にも、様々な感染症が原因となって、「9,674名」の方が亡くなっているそうです(引用:人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡上巻 5-29 感染症による死因(感染症分類)別にみた年次別死亡数及び死亡率(人口10万対) | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)

 この本は、ウイルスが、遺伝情報を変異させながら、様々な動物を経由してヒトに感染して、猛威をふるう姿が生々しく語られています。そして、毎年のようにヒト新興ウイルスが誕生しているそうです。有用なものもあれば病原性もある。その潜在数は膨大と説明されています。

 コロナウイルスだって、昔から存在しています。2002年のSARS、2012年のMARS、全部コロナウイルスです。

 そう、私たちは、ずっとこの先も、with ウイルスだし、たぶん、with コロナ、なんだと思う。

 もちろん、病原性の強いウイルスにはワクチンや治療薬が開発され、なんとか人類は戦っていくでしょう。でも、その戦いは終わりがない。だって、ウイルスが地球生命体の重要なプレイヤーだから。人類の戦いって、人類からみれば戦いなんだろうけど、自然の摂理からみれば、単なるあがきにすぎないかもしれない。

 新型コロナウイルスのパンデミックで、人間と人間の接触がとても少なくなりました。これだけ人口が爆発して、ウイルスの宿主としての場所が豊富にある限り、これからも、ウイルスが手を変え品を変えて、人間に襲いかかってくるでしょう。

 昔だったら、たぶん、人間と人間の接触を止めなかったよね。そして、SARSみたいな結果になっていったんだと思います。でも、今回、初めて、ワクチンや治療薬が開発されるまで、人間と人間の接触を止めるということを人間が徹底的にやりだしたこれが、新しい世界だと思う

 人間の生活や経済を根本からひっくり返す出来事。これから新型コロナウイルスがワクチンや薬で収まれば多少はその揺り戻しがあるんだと思う。でも、人間と人間の接触を止めるという新生活スタイルは根強く残って、新しいウイルスが登場すれば、「接触自粛」が再度強まっていくって感じになるのではないでしょうか。

 嘆いていても仕方ない。この新生活スタイルにどんどん慣れて楽しみを見つけていこう

自己採点(満点:☆☆☆☆☆)
読みやすさ☆☆☆☆
分かりやすさ☆☆☆☆
お役立ち度☆☆☆☆
ストーリーの一貫性☆☆☆
推奨度☆☆☆☆

参考図書

「新型コロナ データで迫るその姿: エビデンスに基づき理解する」大曲 貴夫(化学同人)

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