アリババは中国最大手EC企業の1つです。京東商城(ジンドン、JD.com)と激しい競争をしています。
アリババは、BtoB ECサイトとして「Alibaba.com」「1688.com」、BtoC ECサイトとして「天猫(Tmall)」、CtoC ECサイトとして「タオパオ」、と幅広くインターネット商取引サイトを運用しています。
巨大なアリババはどうやって成長していったんだろう
本書を読むとアリババが創業時代から大きく成長していく過程を”体感”することができます。
1. アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略 |
2. 本を読んだ感想 |
3. 参考図書 |
アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略
タイトル | アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略 |
著者 | ポーター・エリスマン |
出版社 | 株式会社新潮社 |
発行日 | 2015/10/15 |
本体価格 | 1,600円 |
ページ数 | 270ページ |
本を読んだ感想
本書は、「世界戦略」とタイトルしていますが、アリババの世界戦略を解説する本ではありません。
本書は、元アリババ幹部であった著者が創業者CEOの馬雲(ジャックマー)との会話を引き合いに出しつつ、当時のアリババ内部の出来事を語る「アリババ成長のノンフィクションストーリー」といった感じの本です。
本のポイント整理
1. 著者と創業者CEOの馬雲(ジャックマー)の同僚時代の会話を楽しめます。
2. アリババ創業時期の裏話を知ることができます。
3. 海外EC企業との関係についてアリババの考えを知ることができます。
4. 創業者CEOの馬雲(ジャックマー)の性格を垣間見ることができます。
5. 著者が考える「アリババの課題」を知ることができます。
著者と創業者CEOの馬雲(ジャックマー)のアリババ同僚時代の会話
「ポーター、ひとつ聞きたいんだ。いいかな?」。ジャックの声は弱々しかった。今にも泣き出しそうだった。
「ええ、もちろんです。どうしました?」
「わたしは悪い人間か?」
引用:アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略
これは、著者と馬雲(ジャックマー)の会話の一コマです。アリババが海外展開を急ぎすぎていったん海外拠点を縮小せざるを得なかった時期にこのような会話が交わされています。
こういうリアルに交わされた会話がところどころに出てくるのが本書の特徴です。著者が元アリババ副社長であり、アリババ時代の出来事を書いた本を出版することを馬雲(ジャックマー)に許可してもらったことから、当時の生々しい会話を書けたんだろうなと思います。
本書を読むと、まるでノンフィクション映画を見ているかのような感覚になります。
アリババ創業時期の裏話
1999年、アリババはドットコムバブルの最中にマンションの一室でひそかに起業されました。アリババはそこから急成長をとげます。2000~2008年までの創業時期に著者はアリババで働いていました。
その間、例えば、アメリカの大手EC企業eBayが中国進出しようと試み、アリババと大きな確執がありました。この確執の中で、アリババがどう戦ってどうやって勝ち残っていったかなどの創業時期の裏話を知ることができます。
海外EC企業との関係について
日本では、多くの方は、楽天やアマゾンを使ってオンラインショッピングしています。
アリババは、中国で創業され、すぐに中国とアメリカを結ぶオンライン国際取引に進出しています。しかし、アリババは、日本・米国内のECビジネスに本格的に進出していません。
アリババが日米欧に進出してアマゾンなど海外EC企業と直接対決する場面がこれから出てくるのでしょうか。すこし気になるところです。本書では、海外でのECビジネス展開について、アリババの考えが少し紹介されています。
創業者CEOの馬雲(ジャックマー)の性格
本書では、馬雲(ジャックマー)の性格をうかがえる逸話が紹介されています。この逸話が本書を生き生きとした人間くさいノンフィクションストーリーに仕立てています。
例えば、アリババが成長して巨大企業となり、海外のマスコミにインタビューを受けたときの、馬雲(ジャックマー)の一言です。著名な海外俳優の名をあげてこう返答しています。
ええ、わたしはあの男が大好きです。あの映画はもう十回ぐらい観ています。世界がどう変わっても、おまえはおまえなのだ、ということを教わりました。わたしは、今も、十五年前、月給二十ドルで働いていたときと同じ人間です。
引用:アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略
著者が考えるアリババの課題
筆者は最後にアリババの課題を挙げています。
著者は元アリババ副社長なので、アリババの表も裏も知ってるはず。その著者だからこそアリババのこれからの課題が見えてくるんだと思います。その課題の1つとして政府規制対策が挙げられています。
本書は2015年に書かれましたが、最近、著者が当時に課題の1つとして挙げていた政府規制対策と関係するニュースが飛び込んできました。著者は当時からこのニュースを予言していたかのようです。
中国の国家市場監督管理総局は4月10日、電子商取引(EC)大手のアリババ集団に対して、罰金182億2,800万(2,916億4,800万円、1元=約16円)の行政処罰を課すと発表した。同社のインターネットプラットフォームに出店する企業に「二者択一」を強要する行為が、独占禁止法に違反したとしている。
プラットフォーム企業のアリババに約182億元の罰金、独禁法違反(中国) | ビジネス短信 – ジェトロ (jetro.go.jp)
中国EC企業の政府規制対策については、「【企業紹介】京東商城(ジンドン、JD.com)ってどんな会社?」でもご紹介しています。ぜひ読んでみてください!
自己採点(満点:☆☆☆☆☆) | |
読みやすさ | ☆☆☆☆☆ |
分かりやすさ | ☆☆☆☆☆ |
お役立ち度 | ☆☆☆ |
ストーリーの一貫性 | ☆☆☆☆☆ |
推奨度 | ☆☆☆☆ |
参考図書
「世界を戦慄させるチャイノべーション」日経ビジネス編(日経BPマーケティング)
「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」趙 瑋琳 (東洋経済新報社)
「中国デジタル・イノベーション ネット飽和時代の競争地図」岡野寿彦(日本経済新聞出版)