【企業分析】クラウドストライク(CRWD)とはどんな会社?ー高成長企業の”強み”を分析

 クラウドストライクは2011年に創業された米国のサイバーセキュリティ企業です。

 クラウドストライクは創業10年のとても若い会社。高い成長を続けています。クラウドストライクってどんな会社なんだろう?、高成長のクラウドストライクの強みは一体何だろう?と思う方もいるかもしれません。

 当ブログでは、書評スピンアウトとして、興味深い会社を順次紹介しています。前回は中国巨大IT企業「テンセント」。今回は”強み”を中心にクラウドストライクを紹介します。

1 クラウドストライクとは?
 1.1 高い成長期待
2. 本社、従業員数、CEO
 2.1 優れたCEO
3. 製品、サービス
 3.1 高価格
 3.2 最新テクノロジー
4. サイバーテロとの戦い
5. 売上、利益、資産(2020年決算)
 5.1 売上、利益
 5.2 資産
6. 株価推移、株の購入

クラウドストライクとは?

引用:Search for Jobs (myworkdayjobs.com)

 クラウドストライクは2011年に創業された米国のサイバーセキュリティ企業です。本社はカリフォルニア州のシリコンバレーにあります。2019年、NASDAQに上場。急成長中の新興セキュリティ企業です。写真はクラウドストライクのロゴ。赤色の猛禽。同社のセキュリティサービスの特徴を模したような印象です。

高い成長期待

クラウドストライクは市場関係者から高い成長が期待されています。売上に比べて時価総額がとても高いです。

企業売上時価総額PSR
KnowBe4約60億円約5,400億円約90
CyberArk(サイバーアーク)約120億円約6,000億円約50
FireEye (ファイアーアイ)約270億円約5,300億円約20
Proofpoint(プルーフポイント)約320億円約1兆1,000億円約34
McAfee(マカフィー)約500億円約1兆2,000億円約24
SecureWorks(セキュアワークス)約600億円約2,000億円約3
NortonLifeLock(ノートンライフロック)約740億円約1兆6,000億円約22
Fortinet(フォーティネット)約800億円約4兆6,000億円約58
CroudStrike (クラウドストライク)約960億円約6兆2,000億円約65
Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)約1,200億円約4兆1,000億円約34

引用:Google Finance – 株式市場価格、リアルタイムの相場、ビジネス ニュース

引用:Yahoo Finance – Stock Market Live, Quotes, Business & Finance News

 競合企業と比べてクラウドストライクの事業規模(約960億円)はそこそこ大きい程度です。しかし、クラウドストライクの時価総額(約6兆2,000億円)はダントツ。PSR(時価総額/売上額)は約65倍クラウドストライクは、市場関係者から非常に高い成長が期待されている企業であることが分かります。

本社、従業員数、CEO

 本社はカリフォルニア州のシリコンバレーにあります。2021年1月31日現在、フルタイム勤務の従業員の数は、3,394名です(出典:downloadFiling (quotemedia.com)

優れたCEO

(引用:CrowdStrike CEO George Kurtz in Entrepreneur Magazine: What It Takes to Lead

 社長はジョージカーツ。写真のようにまだ若く50歳。ジョージカーツは、McAfee(マカフィー)のCTO(最高技術責任者)でした。McAfee(マカフィー)はサイバーセキュリティ企業の大手。ジョージカーツはその技術系トップのポジションでした。技術者としても大変優秀です。

 ジョージカーツは、2011年、McAfee(マカフィー)を退職して、クラウドストライクを起業します。大企業のCTO(最高技術責任者)まで登り詰めた人がなぜ会社を辞めたんでしょうか。経緯はジョージカーツの高い志にあるようです。

Over time, Kurtz became frustrated that existing security technology functioned slowly and was not, as he perceived it, evolving at the pace of new threats(時がたつにつれ、ジョージカーツは、セキュリティ技術がゆっくりしか進化せず、セキュリティの脅威の進化に遅れてきていることに苛立つようになってきた).

On a flight, he watched the passenger seated next to him wait 15 minutes for McAfee software to load on his laptop, an incident he later cited as part of his inspiration for founding CrowdStrike(ある日飛行機で移動している時、隣の席の乗客がMcAfee(マカフィー)をラップトップPCにインストールするのに15分もかかるのを彼はじっと見つめていた。その時、彼はクラウドストライクを起業しようという直感が働いたんだ).

He resigned from McAfee in October 2011(そして、2011年、彼はMcAfee(マカフィー)を退職してクラウドストライクを起業したのさ).

George Kurtz – Wikipedia

(日本語訳は当ブログの著者が付記)

 クラウドストライクの強みの1つとして”優秀なCEO”が挙げられます。技術者としても優秀であり、その志も高い。そして、CEOの「能力と志の高さ」がもう1つの強みである”最新テクノロジー”へと発展していきます。

製品、サービス

 クラウドストライクのサービスは、クラウド上で稼働するサブスクリプションモデルのセキュリティソフトウェアサービス(SaaS)です。サービス名は「Falcon Endpoint Protection(ファルコン エンドポイント プロテクション)」。

高価格

 (引用:Endpoint Security Products & Services | CrowdStrike)

 1エンドポイント(1台のPC、スマホ、タブレット)あたり、1年間のサブスクリプション料金が「108~228USドル(約12,000円~約25,000円)」。写真のように、「PRO」「ENTERPRISE」「PREMIUM」と3グレード用意され、サービスがすこしづつ違ってきます。

「Falcon Endpoint Protection(ファルコン エンドポイント プロテクション)」の競合製品と価格比較すると、2倍以上の値段であることが分かります。

会社製品・サービス1エンドポイントあたりの1年間のサブスクリプション料金
NortonLifeLockNorton 360 with LifeLock20~60USドル(約2,200円~6,600円)
FireEyeFireEye EndPoint Security30USドル(約3,300円)
McAfeeMvision endpoint security30USドル~(約3,300円~)
CroudStrikeFalcon Endpoint Protection108~228USドル(約12,000円~約25,000円)
(競合選定の出典:CrowdStrike Falcon: Endpoint Protection Alternatives & Competitors | G2

最新テクノロジー

 最新テクノロジーポイント

① エンドポイントの種類に殆ど依存せず、高速にセキュリティを保てる。

② エンドポイントのソフトアップグレード不要。即使用可能。

③ NGAV(Next Generation Anti Virus)サービスである。

④ EDR(EndPoint Detection Responce)サービスである

⑤ ユーザーはサービスを好きなようにカスタマイズできる。

クラウド(高速大容量サーバ):①②

 Falcon Endpoint Protectionは、クラウドと呼ばれるサーバ上で動きます。ユーザはネットにつなげるとそのクラウドとつながりサービスを受けることが出来るようになります。

 クラウドベースのセキュリティサービスは、エンドポイント(端末)の種類に殆ど依存しないので、PC、スマホ、タブレットと様々なエンドポイント(端末)に同じ機能を提供できるようになります。しかも、クラウドと呼ばれる大容量の高速サーバでセキュリティサービスが稼働するので、高速にセキュリティを保つことができます。

NGAV(次世代型ウイルス対策ソフトウェア):③

 NGAVは、次世代型のウイルス対策ソフトウェアです。

 現在のウイルス対策ソフトは、DAT(ウイルス定義ファイル)と一致するマルウェア(不正かつ有害な悪意があるウイルスソフト)が見つかった場合に、マルウェアを駆逐する仕組みです。

(引用;What is Next-Generation Antivirus (NGAV)? | Security & Compliance Blog | VMware

 しかし、マルウェアはどんどん進化していきます。DATもそれに伴って更新されていきますが、結局、DATマルウェアはマルウェアの進化を後追いすることになり、最新のマルウェアに十分対応できません(60%程度のマルウェアしか検知できていないとも言われる)。そして、DATと突き合せるためにPCなどの端末をウイルス対策ソフトウェアが隈無くサーチするので、端末のリソースを消費して、端末の処理スピードが遅くなります

 次世代型のウイルス対策ソフトウェアはこれらの課題を解決した最新技術です。

(引用;What is Next-Generation Antivirus (NGAV)? | Security & Compliance Blog | VMware

 大容量の高速サーバであるクラウドでは、その充実したリソースを生かして、機械学習やAIなど最新技術を使って、マルウェアを網羅的に検知します。

EDR:④

 EDR(Endpoint Detection and Response 、エンドポイントでの検出と対応)とは、エンドポイントをモニタリングし、不審な挙動を検知、分析、報告することで、被害が拡大しないよう対処するセキュリティ・ソリューションを意味します。

(引用:エンドポイント対策で注目されるEDRとは何か?EPPとの違いとは? | お役立ちブログ | 情報セキュリティ対策に関するお役立ち情報 | 企業の情報セキュリティ対策・ITシステム運用のJBS JBサービス株式会社 JBサービス株式会社 (jbsvc.co.jp)

似たような言葉にEPP(Endpoint Protection Platform)があります。

 EPPはエンドポイントでマルウェアを検知する仕組みです。しかし、DATを使って100%マルウェアを検知することは不可能と言われています(現実は60%程度)。従って、マルウェアの侵入や感染を前提として、事後的にマルウェアを検知し除去する仕組みが考えられ、それがEDRと言われています。

カスタマイズ

 現在のウイルス対策ソフトは、それ自体で完結しています。しかし、エンドポイントによっては、ウイルス対策ソフトをそれぞれのエンドポイントに合わせてカスタマイズしたい場合もあります。Falcon Endpoint Protectionは、API(Application Programming Interface)を用意し、自在にAPIを使って対策を強化できる仕組みを提供しています。

(出典:CrowdStrike Falcon Review 2021: Features, Pricing & More | The Blueprint (fool.com))

(出典:(1) New Message! (crowdstrike.com)

サイバーテロとの戦い

 最近、国家間や組織間の戦いは、武器を使った戦争から、経済制裁やサイバーテロなどの情報戦争に移ってきました。最新のサイバーテロに対しては最新のサイバーセキュリティが必要です。クラウドストライクは、政府や公共機関と組んで、様々なサイバーテロに立ち向かって成功を収めています。クラウドストライクの技術の高さが証明されています。

 例えば、2016年、民主党全国委員会に対してサイバーテロ攻撃された際、クラウドストライクはサイバーセキュリティの専門集団としてその対策に関与しています。その経緯はクラウドストライクのブログで紹介されています。

Why did the DNC hire CrowdStrike instead of just working with the FBI to investigate the hack?(なぜ、民主党全国委員会はハッキングを調べるためにFBIと協働するのではなくて、クラウドストライクに依頼したんだ?)

The FBI doesn’t perform incident response or network remediation services when organizations need to get back to business after a breach.(組織がブリーチ(マルウェアの侵入や感染)された後に通常のビジネスに戻る必要があるとき、FBIがマルウェアの対策や脅威の除去を行うことはなかなか難しいからさ)

CrowdStrike is a leader in protecting customers around the world from cyber threats. (クラウドストライクは、サイバー脅威から世界中の顧客を守り抜くリーダーだ)

It is common for organizations to hire third-party industry experts, like CrowdStrike, to investigate and remediate cyber attacks when they suspect a breach even if they are collaborating with law enforcement. (組織がブリーチ(マルウェアの侵入や感染)を疑った時、たとえ組織が法執行機関と協働する場合でも、サイバーアタックを調べ、脅威を取り除くために、クラウドストライクのような第三者の専門家集団を雇うには日常的なこと)

引用:Our Work with the DNC: Setting the record straight (crowdstrike.com)

(日本語訳は当ブログの著者が付記)

売上、利益、資本(2018~2020年決算)

売上、利益

 売上は綺麗な右肩上がり。利益はまだ赤字です。赤字体質は、クラウドストライクが、事業規模の拡大を優先し、利益を後回しにする財務方針をとっているからだと思われます。多くの新興のIT企業も同様です。サイバーセキュリティ分野では、多くの競合企業がひしめき合っています。これらの企業に追いつき追い越すために、現在は、利益にこだわるステージではないとクラウドストライクは判断しているのでしょう。

資産

 総資本も売上同様に伸びています。2020年決算後の自己資本比率は約30%。高い数字ではないですが、売上の伸びによって黒字体質するという一般的な成長軌跡を期待しているなら、この自己資本比率は大きな問題ではありません。

(出典:downloadFiling (quotemedia.com)

株価推移、株の購入

 株価の推移(概略図)です。株価は利益ではなく売上をトレースしようとしていることがわかります。

(出典:Crowdstrike Holdings Inc(CRWD : NASDAQ)株価、ニュース – Google Finance

 クラウドストライクは、NASDAQに上場しています。ティッカーはCRWD。日本に居ながらクラウドストライクに投資することもできます。例えば、マネックス証券で購入できます。

 

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