テラドックヘルスは世界最大規模の米国オンライン診療企業です。2021/4/28、テラドックヘルスの2021年第1四半期決算が発表されました。アーニング・コール(電話会議形式での収支報告発表)を含めて、テラドックヘルスの2021年第1四半期決算をご紹介します。
(引用:Teladoc Health)
決算のポイント
1. 第1四半期は大幅な増収。昨年買収した2社の影響が大きい
2. 好調な第1四半期決算を受け、通期見通しを上方修正
3. アジア・オセアニアへの進出を発表
目次
1. テラドックヘルスとは? 1.1 本社、創業、CEO、従業員 1.2 ビジネス 1.3 買収 |
2. 2021年第1四半期決算 2.1 売上 2.2 調整後EBITDA 2.3 利益/損失 2.4 売上内訳(手数料別) 2.5 売上内訳(国内外別) 2.6 登録ユーザ数(米国分) 2.7 PMPM(per member per month;ユーザ1名の毎月のアクセス手数料) 2.8 2021年通期見通しの上方修正 |
3. 2021年第1四半期決算アーニングコール 3.1 競合との関係 3.2 アジア・オセアニアへの進出 |
4. 2021年第2四半期決算発表予定日 |
テラドックヘルスとは?
本社、創業、CEO、従業員
テラドックヘルスは、2002年に創業された米国オンライン診療企業です。本社はニューヨーク。CEOはジェイソン・ゴレヴィチです。従業員数は4,400名(2020年12月現在)となっています。
ビジネス
テラドックヘルスは、オンライン診療ITサービス(Web、アプリ)を営んでいます。テラドックヘルスの社員自身が患者の診療を行っているわけではなく、オンライン診療ITサービスに登録している外部の医師と患者をオンラインで結ぶITサービス(Web、アプリ)を提供しています。
患者はオンライン診療ITサービスに登録します。その際、名前や住所など個人情報だけでなく、これまでの健康情報も登録しておきます。これによって、オンライン診療ITサービスに登録している外部の医療従事者はオンライン上でも患者の健康状態を正確に把握することができます。
患者は、オンライン診療ITサービス上で、医師とオンライン医療相談するための予約をすることができます。当日、患者はWebやアプリを通じて、オンライン上で医師に医療相談をします。医師が処方箋薬が必要と判断すると、オンライン診療ITサービス上で処方箋を患者に発行し、患者はその処方箋を持参して薬局に向かって処方箋薬を購入することが出来ます。
買収
昨年、テラドックヘルスは2社を買収しました。LivongoとIntouchです。
昨年8月、テラドックヘルスは、Livongoの買収を発表。Livongoは、慢性の生活習慣病(糖尿病、高血圧)の包括的なケアプログラムをサブスクリプション方式で提供している米国の会社です。糖尿病ユーザには、糖尿病測定装置やキットが配布され、ユーザはそれらを使って定期的に測定します。測定結果は自動的に装置に記録され、医療専門家からのアドバイスを受けることも可能です。
昨年1月、テラドックヘルスは、Intouchの買収も発表。Intouchはテラドックヘルスと同業の会社です。テラドックヘルスについてさらに知りたい方はこちらの記事をぜひご覧ください。
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2021年第1四半期決算
売上
前年第1四半期と比べ、+151%の増収でした。+151%の増収(273百万ドルの増収)のうち+82%分(約148百万ドル分の増収)は昨年買収された2社からの増収寄与でした。
調整後EBITDA
調整後EBITDAは、+430%の増益でした。
なお、EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization、いーびっとだー)とは、金利・税金・償却費控除前利益で、会計基準や開示規則上定められた利益指標ではありませんが、特有の事情を反映した利益です。調整後は、同業他社との比較などのために調整されたという意味になります。
利益/損失
純損失は-199.6百万ドル(約220億円損失)とかなり膨らみました。
その理由は、2021年第1四半期決算アーニングコールによれば、報酬、無形資産償却、税調整によるものとのことです。その主な原因は、Livongoの買収のようなので、継続して純損失が膨らむ可能性は低いかもしれません。
売上内訳(手数料別)
売上の86%はアクセス手数料(登録ユーザのサブスクリプション手数料)です。今期のアクセス手数料は388百万ドル、前年同期のアクセス手数料が137百万ドルなので、今期は大幅に増加。2021年第1四半期決算アーニングコールによれば、買収2社の売上の大部分はアクセス手数料なので、買収効果でアクセス手数料が大幅アップだったとのことです。
売上内訳(国内外別)
売上の殆はアメリカ国内事業によるもので、国際化はこれからといったところです。
登録ユーザ数(米国分)
アクセス手数料は、登録ユーザ数×ユーザあたりの毎月のアクセス手数料(PMPM)×12ヶ月、と計算できます。売上の大部分を占めるアクセス手数料を伸ばすには、登録ユーザ数を伸ばすか、ユーザあたりの毎月のアクセス手数料(PMPM)を伸ばすか、両方です。
登録ユーザ数(米国分)については、今期は5,150万人、前年同期は4,300万人。たしかに、前年同期比約20%増加していますが、売上の増加と比べると増加率は低いです。この点は少し気になるところです。
PMPM(ユーザ1名の毎月のアクセス手数料)
登録ユーザ数(米国分)と比べると、PMPMの増加が著しいです。今期は2.24ドル/人・月、前年同期は0.87ドル/人・月なので、前年同期比約160%増加しています。従って、PMPMの増加が売上増加に対して効果的に働いていることが分かります。
昨年8月(3Q-20)、テラドックヘルスは、Livongoの買収を発表しています。その後、PMPMの増加が著しいので、LivongoのユーザのPMPMが高単価だったことが推察されます。ただし、買収後、さらにPMPMは増加し続けているので、この増加傾向が続くかどうかを見守る必要がありそうです。
2021年通期見通しの上方修正
テラドックヘルスは通期見通しを上方修正しました。通期売上見通しは、19.7億ドル~20.2億ドル(以前は、19.5億ドル~20億ドル)。
2021年第1四半期決算アーニングコール
競合との関係
2021年第1四半期決算アーニングコールによれば、アナリストから競合(例えば、アマゾンケアなど)との関係が質問されています。その回答はやや抽象的ですが、包括的ケアの優位性を説明しています。詳細は、2021年第1四半期決算アーニングコールをご覧ください(英語です)。
アジア・オセアニアへの進出
2021年第1四半期決算アーニングコールによれば、テラドックヘルスは、アジアとオセアニアへの進出を発表しています。今期、Generali(香港)とMetLife(オーストラリア)と提携。テラドックヘルスの売上の殆はアメリカ国内事業によるもので、国際化はこれからといったところなので、この2つのニュースは今後のテラドックヘルスを占う意味で注目すべきニュースと思われます。
2021年第2四半期決算発表予定日
7/27に第2四半期決算が発表される予定です。
出典:Teladoc Health, Inc. – Financial Info – Quarterly Results
出典:Teladoc (TDOC) Q1 Earnings Beat, 2021 Revenue Guidance Up | Nasdaq
出典:Teladoc Health (TDOC) Q1 2021 Earnings Call Transcript | The Motley Fool