【企業決算】クラウドストライク(CRWD)2022年第1四半期決算ー大幅増収&通期見通し上方修正

 クラウドストライクは 米国のサイバーセキュリティ企業です。先月3日、2022年第1四半期決算が公表され、大幅増収と通期見通し上方修正でした。第1四半期決算の内容をご紹介します。

引用:Search for Jobs (myworkdayjobs.com)

決算のポイント

・ 2022年第1四半期も高成長を維持(前年同期比で売上+70%)

・Humio買収処理で純損失は拡大

・2022年通期見通しを上方修正

1. クラウドストライクとは?
1.1 本社、CEO、従業員
1.2 製品・サービス
2. 2022年第1四半期 決算
2.1 売上
2.2 売上内訳
2.3 年間経常収益
2.4 Non-GAAP 売上総利益率
2.5 Non-GAAP 売上総利益率 (サブスクリプション)
2.6 純利益/損失
2.7 フリーキャッシュフロー
2.8  EPS(1株あたりの利益/損失;Earning per share)
2.9 バランスシート
3. 2022年通期&第2四半期 見通し
3.1  通期見通し
3.2  第2四半期見通し

クラウドストライクとは?

 クラウドストライクは2011年に創業された米国のサイバーセキュリティ企業です。本社はカリフォルニア州のシリコンバレーにあります。2019年、NASDAQに上場。急成長中の新興セキュリティ企業です。写真はクラウドストライクのロゴ。赤色の猛禽。同社のセキュリティサービスの特徴を模したような印象です。

本社、CEO、従業員

本社はカリフォルニア州のシリコンバレーにあります。2021年1月31日現在、フルタイム勤務の従業員の数は、3,394名です(出典:downloadFiling (quotemedia.com)

 

(引用:CrowdStrike CEO George Kurtz in Entrepreneur Magazine: What It Takes to Lead

 CEOはジョージカーツ。写真のようにまだ若く50歳。ジョージカーツは、McAfee(マカフィー)のCTO(最高技術責任者)でした。McAfee(マカフィー)はサイバーセキュリティ企業の大手。ジョージカーツはその技術系トップのポジションでした。技術者としても大変優秀です。

 ジョージカーツは、2011年、McAfee(マカフィー)を退職して、クラウドストライクを起業します。大企業のCTO(最高技術責任者)まで登り詰めた人がなぜ会社を辞めたんでしょうか。経緯はジョージカーツの高い志にあるようです。

 Over time, Kurtz became frustrated that existing security technology functioned slowly and was not, as he perceived it, evolving at the pace of new threats(時がたつにつれ、ジョージカーツは、セキュリティ技術がゆっくりしか進化せず、セキュリティの脅威の進化に遅れてきていることに苛立つようになってきた).

 On a flight, he watched the passenger seated next to him wait 15 minutes for McAfee software to load on his laptop, an incident he later cited as part of his inspiration for founding CrowdStrike(ある日飛行機で移動している時、隣の席の乗客がMcAfee(マカフィー)をラップトップPCにインストールするのに15分もかかるのを彼はじっと見つめていた。その時、彼はクラウドストライクを起業しようという直感が働いたんだ).

 He resigned from McAfee in October 2011(そして、2011年、彼はMcAfee(マカフィー)を退職してクラウドストライクを起業したのさ).

George Kurtz – Wikipedia

(日本語訳は当ブログの著者が付記)

 クラウドストライクの強みの1つとして”優秀なCEO”が挙げられます。技術者としても優秀であり、その志も高い。そして、CEOの「能力と志の高さ」がもう1つの強みである”最新テクノロジー”へと発展していきます。

製品・サービス

 クラウドストライクのサービスは、クラウド上で稼働するサブスクリプションモデルのセキュリティソフトウェアサービス(SaaS)です。サービス名は「Falcon Endpoint Protection(ファルコン エンドポイント プロテクション)」。

高価格

 (引用:Endpoint Security Products & Services | CrowdStrike)

 1エンドポイント(1台のPC、スマホ、タブレット)あたり、1年間のサブスクリプション料金が「108~228USドル(約12,000円~約25,000円)」。写真のように、「PRO」「ENTERPRISE」「PREMIUM」と3グレード用意され、サービスがすこしづつ違ってきます。

「Falcon Endpoint Protection(ファルコン エンドポイント プロテクション)」の競合製品と価格比較すると、2倍以上の値段であることが分かります。

会社製品・サービス1エンドポイントあたりの1年間のサブスクリプション料金
NortonLifeLockNorton 360 with LifeLock20~60USドル(約2,200円~6,600円)
FireEyeFireEye EndPoint Security30USドル(約3,300円)
McAfeeMvision endpoint security30USドル~(約3,300円~)
CroudStrikeFalcon Endpoint Protection108~228USドル(約12,000円~約25,000円)
(競合選定の出典:CrowdStrike Falcon: Endpoint Protection Alternatives & Competitors | G2

最新テクノロジー

 最新テクノロジーポイント

① エンドポイントの種類に殆ど依存せず、高速にセキュリティを保てる。

② エンドポイントのソフトアップグレード不要。即使用可能。

③ NGAV(Next Generation Anti Virus)サービスである。

④ EDR(EndPoint Detection Responce)サービスである

⑤ ユーザーはサービスを好きなようにカスタマイズできる。

クラウド(高速大容量サーバ):①②

 Falcon Endpoint Protectionは、クラウドと呼ばれるサーバ上で動きます。ユーザはネットにつなげるとそのクラウドとつながりサービスを受けることが出来るようになります。

 クラウドベースのセキュリティサービスは、エンドポイント(端末)の種類に殆ど依存しないので、PC、スマホ、タブレットと様々なエンドポイント(端末)に同じ機能を提供できるようになります。しかも、クラウドと呼ばれる大容量の高速サーバでセキュリティサービスが稼働するので、高速にセキュリティを保つことができます。

NGAV(次世代型ウイルス対策ソフトウェア):③

 NGAVは、次世代型のウイルス対策ソフトウェアです。

 現在のウイルス対策ソフトは、DAT(ウイルス定義ファイル)と一致するマルウェア(不正かつ有害な悪意があるウイルスソフト)が見つかった場合に、マルウェアを駆逐する仕組みです。

(引用;What is Next-Generation Antivirus (NGAV)? | Security & Compliance Blog | VMware

 しかし、マルウェアはどんどん進化していきます。DATもそれに伴って更新されていきますが、結局、DATマルウェアはマルウェアの進化を後追いすることになり、最新のマルウェアに十分対応できません(60%程度のマルウェアしか検知できていないとも言われる)。そして、DATと突き合せるためにPCなどの端末をウイルス対策ソフトウェアが隈無くサーチするので、端末のリソースを消費して、端末の処理スピードが遅くなります

 次世代型のウイルス対策ソフトウェアはこれらの課題を解決した最新技術です。

(引用;What is Next-Generation Antivirus (NGAV)? | Security & Compliance Blog | VMware

 大容量の高速サーバであるクラウドでは、その充実したリソースを生かして、機械学習やAIなど最新技術を使って、マルウェアを網羅的に検知します。

EDR:④

 EDR(Endpoint Detection and Response 、エンドポイントでの検出と対応)とは、エンドポイントをモニタリングし、不審な挙動を検知、分析、報告することで、被害が拡大しないよう対処するセキュリティ・ソリューションを意味します。

(引用:エンドポイント対策で注目されるEDRとは何か?EPPとの違いとは? | お役立ちブログ | 情報セキュリティ対策に関するお役立ち情報 | 企業の情報セキュリティ対策・ITシステム運用のJBS JBサービス株式会社 JBサービス株式会社 (jbsvc.co.jp)

似たような言葉にEPP(Endpoint Protection Platform)があります。

 EPPはエンドポイントでマルウェアを検知する仕組みです。しかし、DATを使って100%マルウェアを検知することは不可能と言われています(現実は60%程度)。従って、マルウェアの侵入や感染を前提として、事後的にマルウェアを検知し除去する仕組みが考えられ、それがEDRと言われています。

カスタマイズ

 現在のウイルス対策ソフトは、それ自体で完結しています。しかし、エンドポイントによっては、ウイルス対策ソフトをそれぞれのエンドポイントに合わせてカスタマイズしたい場合もあります。Falcon Endpoint Protectionは、API(Application Programming Interface)を用意し、自在にAPIを使って対策を強化できる仕組みを提供しています。

(出典:CrowdStrike Falcon Review 2021: Features, Pricing & More | The Blueprint (fool.com))

(出典:(1) New Message! (crowdstrike.com)

クラウドストライクについてさらに知りたい方はこちらの記事をぜひご覧ください。

関連記事

 クラウドストライクは2011年に創業された米国のサイバーセキュリティ企業です。  クラウドストライクは創業10年のとても若い会社。高い成長を続けています。クラウドストライクってどんな会社なんだろう?、高成長のクラウドストラ[…]

2022年第1四半期 決算

売上

 前年同期比70%増大幅増収で着地しました。

売上(百万ドル)
2022年第1四半期302.8
2021年 第1四半期 178.1
前年同期比+70%

 2021年の第1四半期(2021年1Q)~第4四半期 (2021年4Q) と比べても成長は続いています。

  当期のサブスクリプション顧客数は1,524名分増加。1524名分の内、 Humio 買収による増加寄与は119名。

売上内訳

 売上の大半はサブスクリプションの料金です。 プロフェッショナルサービス には、インストール、セキュリティ脅威除去アドバイス、教育プログラムの提供などが含まれています。

売上(百万ドル)
サブスクリプション281.2
プロフェッショナルサービス21.6
合計302.8

年間経常収益

年間経常収益 (10億ドル)
2022年第1四半期1.19
2021年 第1四半期 0.686
前年同期比+74%

 年間経常収益 (Annual Recurring Revenue;ARR)も売上同様の伸びを示しました。

  年間経常収益は、毎年決まって得られる1年間分の売上です。 年間経常収益 は、リカーリングやサブスクリプションのビジネスで重視される数値です。リカーリング は繰り返される事業という意味で、毎月定期的に消耗品を交換するようなビジネスでは 年間経常収益 がよく利用されています。SaaSのような サブスクリプションでも同様です。

 クラウドストライクの SaaS ビジネスはソフトウェア製品を販売して終わりといった売り切り型ではありません。 クラウド ストライク は、ソフトウェア サービス利用権限を顧客に提供し、定期的に利用料( サブスクリプション料金)が入ってきます。このような サブスクリプション 型ビジネスでも 年間経常収益 の経営指標がよく使われます。

  年間経常収益の「 年間 」は1年間を通した売上見込みという意味であり、 クラウドストライク が2022年第1四半期に11.9億ドルの サブスクリプション収入を得た、という意味ではありません

  2021年の第1四半期(2021年1Q)~第4四半期 (2021年4Q) と比べても年間経常収益の成長は続いています。

Non-GAAP 売上総利益率

Non-GAAP 売上総利益率 (%)
2022年第1四半期75%
2021年 第1四半期 77%
前年同期比+2.7%

 Non-GAAP 売上総利益率は前年同期比で少し改善されています。

 GAAPとは「米国会計基準」の略語で、non- GAAPとは「非米国会計基準」の略語です。 non- GAAP は米国会計基準からみて正式ではない指標の頭に付けられます。

Non-GAAP 売上総利益率 (サブスクリプション)

  売上の大半はサブスクリプションの料金なので、 Non-GAAP 売上総利益率 (サブスクリプション分)も公表されています。

Non-GAAP 売上総利益率(サブスクリプション分) (%)
2022年第1四半期78%
2021年 第1四半期 79%
前年同期比+1.3%

 Non-GAAP 売上総利益率 (サブスクリプション分) も前年同期比で少し改善されています。

純利益/損失

 

純利益/損失 (百万ドル)
2022年第1四半期-85.0
2021年 第1四半期 -19.0
前年同期比-247%

 前年同期比で大幅に純損失(赤字)が拡大しました。85.0(百万ドル)のうち48.8(百万ドル)は、Humio買収による知的財産処理によるものです。

フリーキャッシュフロー

 

フリーキャッシュフロー (百万ドル)
2022年第1四半期117.3
2021年 第1四半期 87.0
前年同期比+34.8%

フリーキャッシュフローは前年同期比で34.8%増加しました。

  フリーキャッシュフロー は順調に上昇しています。

EPS(1株あたりの利益/損失;Earning per share)

 

EPS(ドル)
2022年第1四半期-0.38
2021年 第1四半期 -0.09
前年同期比-222%

 当四半期は、純損失(赤字) の拡大に伴って、EPSも大幅に低下しています。ただし、純損失の85.0(百万ドル)のうち48.8(百万ドル)は、Humio買収による知的財産処理によるものであり、この処理結果がEPSに直接に反映されています。

EPSは各期の純利益/損失を発行株数分で分割する形式で経時推移しています。

バランスシート

 

総資本(億円)負債(億円)純資産(億円)自己資本比率(%)
2022年第1四半期 1,51976675349.6
2021年 第1四半期 2,8812,02885329.6

 前年同期と比べると資産規模が大きく拡大しつつ負債比率が上昇しています。 クラウドストライク はレバレッジを高めることでも高い成長を続ける財務戦略をとっているものと思われます。

2022年通期&第2四半期 ガイダンス

通期見通し

 2022年通期見通しを上方修正しました。通期売上と通期non-GAAP利益の見通しは共に上方に修正されています。

単位: 百万ドル

2022年通期
non-GAAP 売上見通し
2022年通期
non-GAAP 利益見通し
2022年通期
1株当たりの non-GAAP 利益
2022年第1四半期決算時1,347.0~1,365.7 ( 百万ドル )83.1~97.0 ( 百万ドル ) 0.35~0.41(ドル)
2021年通期決算時1,310.4~1,320.7 ( 百万ドル ) 63.8~71.4 ( 百万ドル ) 0.27~0.30(ドル)

第2四半期見通し

 022年第2四半期(2021年5月1日~ 2021年7月30日 )の見通しも併せて示されました。

2022年第2四半期
non-GAAP 売上見通し
2022年 第2四半期
non-GAAP 利益見通し
2022年 第2四半期
1株当たりの non-GAAP 利益
318.3~324.4  ( 百万ドル )17.7~22.1  ( 百万ドル ) 0.07~0.09(ドル)

うたの書評の最新情報♪
PAGE TOP