【企業決算】レスメド(RMD)2021年第3四半期決算ー特需は一服

 レスメドは、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器に関する医療機器やマスクを製造・販売する米国企業です 。4月29日、2021年第3四半期決算が公表されました。決算内容をご紹介します。

(引用:Buy CPAP supplies online – ResMed

 決算のポイント

1. 売上は前年同期と比べ横ばい。新型コロナによる特需が一服。

2. 税金引当金によって今期は純損失となった 。

3. 今期配当は前年同期配当と同額で維持された 。

1. 会社概要
1.1 本社
1.2 従業員
1.3 CEO
1.4 ビジネス・製品・サービス
2. 2021年第3四半期決算
2.1 売上
2.2 地域別売上
2.3 製品・サービス別売上
2.4 売上総利益
2.5 non-GAAP 売上総利益
2.6 純利益/損失
2.7 営業キャッシュフロー (第1~3四半期合計)
2.8 投資キャッシュフロー (第1~3四半期合計)
2.9 財務キャッシュフロー (第1~3四半期合計)
2.10 基本EPS(1株あたりの利益/損失;Earning per share
2.11 希薄化EPS( 1株あたりの利益/損失;Earning per share
2.12 バランスシート
2.13 配当
3. 2021年第4四半期決算の予定

会社概要

本社

本社はカリフォルニアにあります。

従業員

2020年1月30日時点で、従業員数は7,770名。それぞれの部門にバランスよく配置されています。

部門従業員数
製造、その他営業コスト関連業務3,490名
研究・開発1,280名
営業、マーケティング、管理3,000名
合計7,770名

レスメドは140ヶ国でビジネスを展開しているグローバル企業です。従業員も各地で働いています。

CEO

(引用:ResMed Executive Team Bios – ResMed

 CEOはマイケルファレル。2000年にレスメドに入社。その前はSanofi Genzymeなどで働いていました。現在、 レスメドのCEOの傍ら、Zimmer Biomet (NYSE: ZBH)の取締役も勤めています。年齢は48歳ですが、写真のように貫禄ある社長さんです。

ビジネス・製品・サービス

ビジネス地域

  レスメドは米国欧州アジアなどグローバルに事業展開しています。米国・カナダ地域を中心に、欧州やアジアでも レスメドの製品・サービスは患者に利用されています。

(出典:ResMed Foundational Branded PowerPoint (q4cdn.com)

3種類の製品・サービス

  レスメドは、呼吸器疾患治療に関するマスクや医療機器を製造販売しています。さらに、院外でのSaas医療ITネットワークサービス事業にも進出しています。 医療機器とマスクが主力です。

(出典:ResMed Foundational Branded PowerPoint (q4cdn.com)

2種類の医療分野

 主力の医療分野は 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome) と慢性閉塞性肺疾患(COPD: Chronic Obstructive Pulmonary Disease)です。レスメドは睡眠・呼吸にほぼ特化した会社した会社と言ってよさそうです。

(出典:ResMed Foundational Branded PowerPoint (q4cdn.com)

マスク

 代表的な製品は睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)治療用のマスクです。様々なタイプのマスクが販売されています。例えば、「AirFit™ F10 full face」は、写真のようなマスクです。

 (引用:AirFit™ F10 and AirFit F10 for Her full face masks – ResMed Healthcare Professional

 閉塞性睡眠時無呼吸タイプに有効な治療方法として、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure;持続陽圧換気療法)が知られています。 「AirFit™ F10 full face」 は、 CPAP 用のマスクとして販売されています。下の写真のように、患者は就寝時に頭にマスクを固定して、口鼻部分にこのマスクをはめます。睡眠中、CPAP装置からエアチューブを伝い、空気が送り込まれます。

(引用:AirFit F10 full face CPAP mask – ResMed

医療機器

 レスメドの代表的な医療機器は人工呼吸器です。

 睡眠時無呼吸症候群(睡眠関連呼吸障害(sleep related disorder breathing;SRDB)と称されることもある)への治療として、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure;持続陽圧換気療法)がよく知られてい ますが、CPAPの他、APAP、BPAP、ASVも知られています。

(出典:成人OSAにおいてCPAPは本当に第一選択なのか?:Pros. CPAPは成人睡眠関連呼吸障害治療の第一選択である (jst.go.jp)

 また、2相性陽圧 (Bi level) の呼吸器も知られています(出典:インスピレーション No.7 (me-times.co.jp))。

 レスメドは、このような様々なタイプの人工呼吸器を製造販売しています。

(引用:airsense10_aircurve10_product_and_therapies_matrix_amer_eng.pdf (resmed.com)

競合

 レスメドの代表的な競合企業は以下の通りです。

競合会社本社所在地分野/製品
フィッシャー・アンド・パイケル・ヘルスケア ニュージーランド呼吸・救急医療分野。CPAP製品の販売など。
フィリップスオランダAED、X線装置、人工呼吸器など。
メドトロニックアイルランド心臓ペースメーカー、人工呼吸器など。
GEヘルスケア米国CT、MRI、バイタルサインモニタなど。

資本戦略

 各会社が資本をどのように活用するかは会社の資本戦略に依存します。成長著しい新興企業は、配当・自社株買いといった株主還元よりも自社製品・サービスの開発に資本をより多く投下する傾向があります。 新興企業は、 資本の有効活用の観点から、株主にそれぞれの決算時点での現金を還元するよりも将来の投資に向けたほうが長い目でみて株主に報いることができると考える傾向があると言い換えることもできます。

 レスメドの資本戦略の優先順位は次の通りです。

レスメドの資本戦略

・優先順位1 レスメド新製品・サービス開発への投資(再投資戦略)

・優先順位2 M&A(買収戦略)

・優先順位3 配当還元

・優先準備4 自社株買い

(出典:ResMed Foundational Branded PowerPoint (q4cdn.com)

 レスメドの売上は3,000億円程度です。140ヶ国で事業を行っています。しかし、 レスメドの創業は1989年、上場は1995年と、ヘルスケア分野では新興企業といってよいと思います。レスメドの資本戦略は、自社製品・サービスの研究・開発にこそが資本効率の最大化につながるとレスメドは信じていることを示していると言えそうです。

ビジネス戦略

 レスメドのビジネス戦略は以下の7つの戦略です。特に①~④は現在のビジネスに直結する戦略なのでとりわけ重要だと思われます。

 呼吸器・睡眠障害に関する医療分野に特化し、自社の研究・開発をベースにヘルスケアIT技術を取り入れて製品・サービスを高度化/拡張することで優れた医療製品・サービスをグローバルに展開するという戦略です。

①睡眠時無呼吸症候群治療分野における研究・開発を継続

多様な製品ラインナップ(マスク:AirTouch and AirFitなど)。マスクセレクターなどのコンビネーション製品によるサービスの高度化

 ② COPDや神経筋疾患など呼吸器分野における製品ポートフォリオの拡大

マスク、人工呼吸器の他、酸素濃縮器など製品ポートフォリオの拡大

 ③在宅治療におけるソフトウェアサービス(SaaS)を強化

Brightree、MatrixCare、HEALTHCAREを買収。院外のヘルスケアを SaaSで高度化

 ④世界でのプレゼンスを向上

現在、140ヶ国でビジネスを展開。2016年、 Curative Medical を買収することで中国市場へ進出。2019年、 HB Healthcare買収により、韓国市場へ。

 ⑤公衆への啓蒙活動

睡眠障害やCOPD治療に関するプロモーション活動

 ⑥満たされていない治療ニーズへの新しい適用

研究によって、OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)と脳卒中・うっ血性心不全との関連性や睡眠時無呼吸症候群が高血圧の原因となっていることなどを明らかにしてきた。

 ⑦マネージメントの活用

睡眠障害、呼吸器、ヘルスケアIT等の分野で得たマネージメントチームの経験を生かす

(出典:ResMed-Form-10-K-June-30,-2020-(as-filed-on-12-August-2020).pdf (q4cdn.com)

レスメドについてさらに知りたい方はこちらの記事をぜひご覧ください。

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2021年第3四半期決算

売上

売上(百万ドル)
2021年第3四半期768.8
2020年第3四半期 769.5
前年同期比0%

 前年同期と比べて売上は横ばい。前年同期はCOVID-19流行による売上増が$35(百万ドル )でした。この一過性による売上増を除けば、今期は5%程度増収という計算になります。

地域別売上

米国、カナダ、ラテンアメリカ(百万ドル)欧州、アジア、他(百万ドル)合計(百万ドル)
2021年第3四半期496.7272.1 768.8
2020年第3四半期 483.1286.3 769.5
前年同期比+2.8%-5.0% 0%

 地域によって売上増減の偏りは見られていません。

製品・サービス別売上

医療機器 (百万ドル) マスク等 (百万ドル) SaaS (百万ドル) 合計(百万ドル)
2021年第3四半期365.7309.293.8 768.8
2020年第3四半期 391.5288.489.6 769.5
前年同期比-6.6%+7.2% +4.7%0%

 今期の医療機器の減収は COVID-19流行特需の一服による人工呼吸器の売上減によるものです。

売上総利益

売上総利益(百万ドル) 売上総利益率(%)
2021年第3四半期44758.2
2020年第3四半期 45058.4
前年同期比-1%0%

 原価との関係で利益率に大きな変化はありませんでした。

non-GAAP 売上総利益

non-GAAP 売上総利益率(%)
2021年第3四半期59.6
2020年第3四半期 60.0
前年同期比-1%

  non-GAAP においても 原価との関係で 利益率に大きな変化はありませんでした。

純利益/損失

純利益/損失 (百万ドル)
2021年第3四半期-78.5
2020年第3四半期 +163
前年同期比-148%

 今期は純損失となってしまいました。これは主に税金引当金(254.8百万ドル)によるものです

 税金引当金について、レスメドは次のように説明しています。

“During the quarter we also made substantial progress toward resolving our long-running dispute with the Australian Tax Office. Although we do not have a final agreement, we have taken a reserve of $255 million, reflecting our estimate of the net impact of a potential settlement. Our next steps are to agree on the final terms of a resolution giving us clarity for the future.

ResMed – ResMed Inc. Announces Results for the Third Quarter of Fiscal Year 2021

 この説明によれば、レスメドはオーストラリア国税庁と税金の支払いについて色々議論しているようです。現在、レスメドとオーストラリア国税庁はこの議論について最終合意をしていませんが、 レスメドは、今期に、税金引当金(254.8百万ドル)を計上したようです。今後、レスメドは オーストラリア国税庁と税金の支払いについて最終合意を目指すとのことなので、最終合意が得られるまでは見守る必要がありそうです。

営業キャッシュフロー(第1~3四半期合計)

営業キャッシュフロー (百万ドル)
2021年第3四半期510.2
2020年第3四半期 472.0
前年同期比+8.1%

 営業キャッシュフローは順調です。

投資キャッシュフロー (第1~3四半期合計)

投資キャッシュフロー (百万ドル)
2021年第3四半期-110.4
2020年第3四半期 -176.5
前年同期比+37.5%

 外貨売買契約の満期によって、 外貨売買契約にかかるキャッシュフローが、前期は-32.2(百万ドル)、今期は26.3 (百万ドル) となり、 投資キャッシュフローは大幅に改善しました。

 計上されている投資キャッシュフロー科目は、固定資産(土地、建物、設備)の購入費用、特許登録費用、事業買収費用、投資費用、 外貨売買契約にかかる費用となっています。

財務キャッシュフロー (第1~3四半期合計)

財務キャッシュフロー (百万ドル)
2021年第3四半期-650.1
2020年第3四半期 -81.0
前年同期比-802%

 企業の資金の借入れに関連して発生する利息およびその他の費用について、前期は990(百万ドル)、今期は90(百万ドル)でした。この差分が財務キャッシュフローの大幅減少に寄与しています。

基本EPS(1株あたりの利益/損失;Earning per share)

EPS(ドル)
2021年第3四半期-0.54
2020年第3四半期 1.13
前年同期比-147.8%

今期の基本EPSは大きく減少しました。この減少は 主に税金引当金(254.8百万ドル)によるものです

希薄化EPS(1株あたりの利益/損失;Earning per share)

EPS(ドル)
2021年第3四半期-0.54
2020年第3四半期 1.12
前年同期比-148.2%

今期の希薄化EPSは大きく減少しました。この減少は 主に税金引当金(254.8百万ドル)によるものです

バランスシート

 

総資本(百万ドル) 負債 (百万ドル) 純資産(百万ドル) 自己資本比率(%)
2021年第3四半期4585.71876.52709.2 59.1
2020年第3四半期 4587.32090.32497.0 54.4

今期はいくぶん負債が圧縮され自己資本比率が高まっています

配当

1株あたりの配当
2021年第3四半期$0.39 
2020年第3四半期 $0.39

 純損失となりEPSもマイナスとなってしまいましたが、無配転落や配当減額はせず、前年同期の配当金 $0.39 を維持することになったようです。レスメドは、純損失の主な原因が税金引当金(254.8百万ドル)によるものであり、営業活動自体に何か問題があると考えていない等の理由により、配当維持を決めたいものと思われます。

 2020年第1~4四半期と2021年第1~3四半期、合計7期について、配当金は$0.39で固定されています。

(出典:ResMed – Investor Relations – Stock Information

2021年第4四半期決算の予定

 2021年第4四半期決算は8/5に公表予定です。

(出典:ResMed – ResMed Inc. Announces Results for the Third Quarter of Fiscal Year 2021

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