新型コロナウィルスの流行によって、日本では大学生のオンライン授業が普及しました。
米国大学生のオンライン学習ってどんな状況なんだろう?って思う方もいるかもしれません。
米国で”Chegg study”を推進する高校大学生向けオンラインチューター「Chegg(チェグ)」をご紹介します。
(引用;Home – Chegg)
Cheggは米国大学生にとって最も注目されている企業であり、競合会社の中でNo.1の評価を受けている企業です。
今回は、Cheggな人気な理由に迫ってみたい、と思います。
1. Cheggとは? 1.1 ビジネスモデル 1.2 本社 1.3 CEO 1.4 従業員数 |
2. 各サービスと料金体系 2.1 料金表 2.2 無料のお試しコース 2.3 Chegg Studyとは? 2.4 Chegg Writingとは? |
3. サービスへの評価 3.1. サブスク利用学生数 3.2 学生における認知度 3.3 競合会社との比較 3.4 Cheggが人気な理由 |
4. 買収による成長 |
5. 決算(2020年) 5.1 売上 5.2 純利益/純損失 5.3 基本EPS 5.4 希薄化EPS 5.5 営業キャッシュフロー 5.6 投資キャッシュフロー 5.7 財務キャッシュフロー 5.8 バランスシート 5.9 配当 |
6. 株式 6.1 上場証券取引所、ティッカー 6.2 株価チャート、時価総額 6.3 取扱い証券会社 |
Cheggとは?
Cheggとは米国の高校大学生向けオンラインチューターサービスを提供するIT企業です。
米国の高校大学生も日本の高校大学生と同様に自宅でも学習します。
ただし、米国の大学生の勉強時間は日本の大学生のそれよりもはるかに長いです。
大学生に限ると日本では週あたり5時間程度。米国では週あたり45時間。
米国の大学生は宿題が多くて自宅の勉強が大変💦 そこに目をつけたのがChegg。
Cheggは米国の高校生大学生の自宅学習をオンラインでお手伝いするIT企業です。
(出典;What You Need to Know About College Homework | Student Assembly)
(出典;資料3-2 関連データ(2/2) (mext.go.jp))
Cheggは米国大学生にとって最も注目されている企業であり、競合会社の中でNo.1の評価を受けている企業でもあります。
ビジネスモデル
Cheggは、米国の高校大学生が自宅学習するときに、オンライン上に、教科書、教科書の問題と解答、先輩のチューターさんと相談する場などを提供し、見返りに手数料を頂くというビジネス(Chegg Services)を行っています。
(引用;Chegg, Inc. – Events & Presentations)
Chegg Servicesは、「Cheg Study」「 Chegg Writing」「Chegg Math Solver」「Thinkful」というふうに、4種類に分かれています。「Thinkful」は学生用というより、職を得たい方向けの職業訓練サービスといった感じです。
物販事業もあります。教科書販売(Required materials)です。教科書はレンタルも可能です。
上図には書かれていませんが、「Chegg Tutor」というサービスもあります。オンライン上でチューターさん(講師)がマンツーマンで指導してくれるサービスです。
要するに Chegg Studyは、 学生が勉強する材料をオンライン上に豊富に用意し、その自学自習で満足できないところだけをチューターさんがお助けするという、便利で都合がよく、かゆいところに手が届くといういいとこ取りのオンライン教育プラットフォームと言えます。
(引用;< D chegg.com = Chegg Study Textbook Solutions Expert | Chegg.com)
上図は Chegg Study画面です。ここでは教科書の問題を解くことができます。Step-by-step(1歩1歩)の解き方と解答を提供して学生にも考えさせる仕組み(Expert Q&A)が用意されています。
本社
カリフォルニア州のサンタクララに本社があります。サンタクララはシリコンバレーの一角なので、インテルやNVIDIAの本社など世界中のハイテク企業が集中するハイテク地域です。
CEO
(引用;Dan Rosensweig Speaking at SXSW EDU 2020 | SXSW EDU)
ダン・ローゼンズヴァイク(Dan Rosensweig、58歳)。比較的若く見えます。ダン・ローゼンズヴァイクも”プロ”経営者。以前は、CNETやZDNet(ニュースサイト)のCEOでした。IT業界というよりオンラインメディア業界の人という感じです。
従業員
2020年年末時点で1941名。その内、815名(約40%)は米国外で働いている従業員です。
Cheggは、米国に加え、英国、オーストラリア、カナダの学生さんからも利用されています。
ただし、米国と米国外の売上比は不明です💦
各サービスと料金体系
料金表
サービス | 料金 |
Chegg Study | 14.95 ドル/月(約 1,650円/月) |
Chegg Writing | 9.95ドル /月(約 1,100円/月) |
Chegg Math Solver | 9.95ドル /月(約 1,100円/月) |
Chegg Study Pack(3つ全部) | 19.95 ドル/月(約 2,200円/月) |
無料のお試しコース
無料のお試しコース(Chegg Study Free Trial)があるようです。
学生が無料コースに満足であれば、学生は引き続き有料のコースを購入すると思われます。
無料のお試しコース
・4週間、Chegg Studyが無料。さらに、30分、 チューター(Chegg Tutor) を利用できる
・1週間、オンライン上の教科書に無料でアクセス可能
(出典;Chegg Coupons – Free Trial of Study / Free Shipping on Books (offers.com))
ここでは代表的なサービスであるChegg StudyとChegg Writingを取り上げてご紹介します。
Chegg Studyとは?
2万冊を超える教科書、300万を超えるQ&A集などが見放題です。
学生さんは普段は Chegg Studyの教科書とQ&A集で勉強します。ただし、教科書とQ&A じゃどうしても分からないこともあります。そういう場合は、Chegg Tutorを利用することができます 。Chegg Tutor の料金は利用時間に依存します。例えば、学生さんが毎月2時間チューターとオンライン相談したい場合、月に30ドル加算されます。
(引用;(8) Chegg Study Experience – YouTube)
これは、 Chegg Studyの体験ビデオ。
学生さんが自分だけで学習が進まない場合、チューター(Chegg Tutor)を利用します。
各チューターの学歴・専攻・口コミなどが履歴書のように掲載されていて、自分に合ったチューターを選べることができます。各チューターがオンライン上にいるか否かもチェックできるようになっているので、 チューター(Chegg Tutor) は、聞きたい時に聞きたいチューターに聞きたいことを聞けるという、便利なサービスです。毎日24時間、利用できます。
(引用;Chegg Review: Can a One-Stop Shop Really Offer it All? – Cool College Helpers)
この写真では、検索した結果、511人のチューターがヒット。同時にオンライン上にいるチューターは25名。上から4番目のAnupさんは「公認会計士」さん。2007年に商学部を卒業。学生さんからの「いいね数」が474名と人気講師であることがわかります。
Chegg Writingとは?
米国の高校大学ではあるテーマが与えられ、そのテーマに関係する多くの文献を引用しつつテーマを論文として纏めるような勉強や宿題もあります。
そんな時に「Chegg Writing」はとても便利。
Chegg Writing の機能
・テーマに関係する文献を簡単に見つけられ、論文に引用形式で文献を記載してくれます。
・論文が盗作に当たらないことをチェックします。
・文法チェックを行います。
(引用;(10) Chegg Writing Services Experience – YouTube)
私も論文やビジネス文書を書くことがあるんですが、文献の引用は本当にめんどくさい。文法ミスや誤字脱字のチェックもかなり面倒です。たったこれだけのことなんですが、論文作成や書き物をする学生さんにとってみれば、めんどくさいことは全部 「Chegg Writing」 に任せ、書き物の中身に集中できる、というすごいメリットがあります。
私も欲しいくらい。たったの 9.95ドル /月で利用できるなんて羨ましいです💦
サービスへの評価
サブスク利用学生数
Cheggが視野に入れている市場は、米国・カナダ・豪州・英国を始めとするマーケットが大きい国。日本も含まれます。これらの地域の潜在顧客(学生さん)は、約1億人です。そのうち、Cheggのサブスク利用学生数は660万人。グローバル潜在顧客数の6.6%に過ぎません。
サブスク利用学生の大半が米国の学生さん。米国の学生さん3,600万人のうちの15%程度がChegg Serviceのサブスクに登録しています。
(引用;Chegg, Inc. – Events & Presentations)
学生における認知度
大学での勉強・生活にとって最も注目されている企業はどこ?というアンケートで、CheggはNO.1を獲得しました。今やCheggは米国の大学生にとって注目の的と言ってよいでしょう♪
(引用;Chegg, Inc. – Events & Presentations)
他のオンライン学習企業/団体(Quizlet、Khan Academy)はもちろんのこと、巨人であるAmazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)さえも押さえ、 Cheggは今の米国大学生にとって圧倒的に注目されています。
競合会社との比較
競合会社の中で、CheggはNo.1の評価を受けています。
NO.1の理由
・お手頃な価格。題材の豊富さ。柔軟なサービス。
・チューターの優秀さ。
・1日24時間、年中無休のサービス。
(出典;The 8 Best Online Tutoring Services of 2021 (verywellfamily.com))
Cheggが人気な理由
ここで、Cheggが大学生にとても人気な理由を纏めます。
Cheggが人気な理由
・1日24時間、年中無休、どこでも利用できる。
・普段は自分のペースで勉強でき、聞きたい時だけチューターに聞けばよい。
・チューターは優秀。自分の好きな課題に適したチューターを自由に選べる。
・米国の大学生は自宅でも長時間勉強する。このようなサービスなので効率的に勉強できる。
この人気の理由がCheggの強さの秘密と思われます。
買収による成長
Cheggは買収によって大きく成長してきました。
買収された会社の集合体が今のCheggと言ってよいと思います。
買収の歴史
・2010年、同業者のCramsterを買収。
・2011年、学生用オンラインマーケットプレイス企業であるNotehallを買収。
・2011年、学生とリクルーターの仲介会社であるZinchを買収
・2011年、IT企業の3D3Rを買収
・2014年、オンラインチューター企業のInstaEDUを買収
・2016年、 IT企業のImagine Easy Solutionsを買収
・2017年、ドイツのCogeon GmbHを買収
・2018年、AI企業WriteLabを買収
・2019年、Thinkfulを買収
(出典;Chegg – Wikipedia)
決算(2020年)
売上
売上は順調に伸びています。主な理由はChegg Serviceの売上増加によるものです。Chegg Serviceの利用者も順調に増加しています。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
売上(百万ドル) | 254 | 255 | 321 | 411 | 644 |
純利益/純損失
赤字が続いています。ただし、赤字額は徐々に小さくなってきました。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
純損失(百万ドル) | -15 | -10 | -6 |
基本EPS
純損失をそのまま株数単位に変換したものです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
基本EPS(ドル) | -0.13 | -0.08 | -0.05 |
希薄化EPS
新株発行などの希釈化はありません。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
希薄化EPS(ドル) | -0.13 | -0.08 | -0.05 |
営業キャッシュフロー
営業活動自体はとても順調です。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
営業キャッシュフロー(百万ドル) | 75 | 113 | 236 |
投資キャッシュフロー
投資は拡大傾向のようです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
投資キャッシュフロー(百万ドル) | -83 | -703 | -733 |
財務財務キャッシュフロー
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
財務キャッシュフロー(百万ドル) | 256 | 604 | 589 |
バランスシート
自己資本比率は30%程度。営業キャッシュフローと売上の増加傾向が認められるので、この傾向が続けば、バランスシートはさほど心配ないように思われます。
負債(百万ドル) | 1,641 |
純資産 (百万ドル) | 610 |
総資本 (百万ドル) | 2,251 |
配当
Cheggは今まで無配であり、今後しばらくも無配方針とのことです。Cheggは成長企業であるので、成長段階で株主にキャッシュを還元するより、それをビジネスに再投資したほうが長い目で株主還元につながるだろうと考えているものと思われます。
We do not intend to declare or pay any cash dividends in the foreseeable future.
0001364954-21-000013 (d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net)
(出典;0001364954-21-000013 (d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net))
株式
上場証券取引所、ティッカー
ニューヨーク証券取引所に上場しています。ティッカーは「CHGG」です。
株価チャート、時価総額
売上をトレースするように株価も上昇しています。
時価総額は、約114.09(億ドル)。日本円で約1兆2,500億円(2021/8/20現在)。
(出典;CHGG 79.54 -0.49 -0.61% : Chegg, Inc. – Yahoo Finance)
取扱い証券会社