【企業決算】ザイリンクス:2022年第1四半期決算(増収増益)、今後の見通し、株価

 最近、FPGAという言葉を聞くようになりました。

 FPGA(Field Programmable Gate Array)は、現場で何度でも書き換えできる半導体(IC)デバイスです。

 FPGAは、フレキシブルさ、低消費電力性、低遅延性、高効率から、車載機器、パソコン、スマートフォン、ミサイル、仮想通貨マイニング、手術支援ロボット、除細動器といった治療機器にまでその用途が大きく広がっています。

 この記事では、FPGAの分野で世界をリードするザイリンクスを取り上げ、2022年第1四半期の決算と今後の見通しなどをご紹介します。

(引用;一般的なコーポレート ロゴとイメージ (xilinx.com)

2022年第1四半期の決算をまとめます

 2022年第1四半期決算まとめ

・売上は前年同期比+21.0%

・利益は前年同期比+120.0%

・売上の増加は主にABC(車載等向け)とDCG(データセンタ向け)分野の好調による

・利益の大幅増は主に税法上の取扱いに起因

今後の見通しをまとめます

 今後の見通し

・AMDによる買収日(2020/10)から少なくとも1年間は無配

1. 会社概要
1.1 本社
1.2 CEO
1.3 従業員数
2. ザイリンクスの製品
2.1 市場占有率
2.2 カテゴリー
2.3 用途
3. 2022年第1四半期決算
3.1 売上
3.2 純利益/純損失
3.3 基本EPS
3.4 希薄化EPS
3.5 営業キャッシュフロー
3.6 投資キャッシュフロー
3.7 財務キャッシュフロー
3.8 バランスシート
3.9 配当
4. 今後の見通し
5. アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)による買収
6. 株式
6.1 上場証券取引所、ティッカー
6.2 株価チャート
6.3 取扱い証券会社

会社概要

 集積回路(IC)の1種であるFPGAの設計・開発・販売などを手がける半導体メーカーです。

 ICには、FPGAの他に、CPUやASICという種類があります。

 FPGAとASICは特定の処理に特化したカスタム型ICであり、CPUはどんな処理でもこなせる汎用型ICです。FPGAは、演算速度や消費電力などの点でCPUよりも優位であり、フレキシブルさの点でASICより優位なICと言えます。

 1985年、世界で初めてFPGAを商品化した会社がザイリンクス。現在でも、 FPGAの設計・開発・販売をリードしています。ザイリンクスは1984年に設立されました。

本社

 本社はカリフォルニア州のサンノゼにあります。 サンノゼは、半導体・コンピュータ関連の産業が集積するシリコンバレーの中心区域です。

CEO

(引用;Victor Peng (xilinx.com)

 CEOはビクター・ペン(61歳)です。

 ビクター・ペンは 半導体業界の申し子であり生粋の技術者でもあります。

 ビクター・ペンは 1982年にDEC(Digital Equipment Corporation)で技術者としてのキャリアを始めました。DECは、後にCOMPAQに買収され、さらにCOMPAQはHP(ヒューレット・パッカード)に買収されました。DECでの勤務の後、 ビクター・ペンは 、MIPS TechnologiesやSGIなどの半導体企業で重要なポジションで活躍しています。

 写真のように理知的でタフな容貌はいかにも技術者として最前線を長年歩んできたことを伺わせます。

従業員数

 従業員は4,890名(2021年4月時点)です。

(出典;3f77caaa-e0e9-4e8a-a2ee-3f40d4536bd9 (xilinx.com)

ザイリンクスの製品

(引用;Virtex-7 H580T: 28G Transceiver Demonstration – YouTube

市場占有率

 FPGAのマーケットは2社によってほぼ独占されています。アルテリア(Altera)とザイリンクス(Xilinx)です。

<2015年のFPGAメーカーの売上比>

(出典;List of FPGA Companies – HardwareBee

 2015年、インテル(Intel)が アルテリアを買収しました。2020年の秋、 アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)がザイリンクスに買収提案をして、アドバンスト・マイクロ・デバイスとザイリンクスが合意しました。CPUの大手2社が FPGA大手2社を飲み込んだ形です。

 今後、 アルテリア(Altera)とザイリンクス(Xilinx) 共にCPUメーカー配下となって、ビジネスの優位性がどのように変化するかを注意深く観察する必要がありそうです。

カテゴリー

 ザイリンクスの製品は、大きく4つに分類されます。

カテゴリー概要
FPGAs何度でも書き換えできるカスタム型の集積回路(IC)
SoCs(プログラマブルSoC)CPUとメモリなどのコンピューティング回路とFPGAを集積したシステムLSI
3DICs(3次元ICs)CPUとメモリなどを3次元にスタックするIC
その他

用途

  ザイリンクスの製品は、 幅広い用途に使用されています。

 用途

・AIT・・ 航空、防衛、産業、テスト・エミュレーション

・ABC・・ 車載、放送、消費者向け

・WWG・・ ワイヤレス通信

・DCG・・ データセンター

・その他

 近年は、中でも、 車載、放送、消費者向け (ABC)向けの売上げが成長しています。

(出典;Annual Reports | Financial Information | Investor Relations | Xilinx

2022年第1四半期決算

売上

過去3年の売上は漸増傾向です。

2019年2020年2021年
通年売上(百万ドル)3,0593,1633,148

 今四半期(22-Q1)の売上は前年同期(21-Q1)比+21.0%でした。

21-Q121-Q221-Q321-Q422-Q1
四半期売上(百万ドル)727767803851879

 用途別の今四半期(22-Q1)売上では、特に、ABC(車載、放送、消費者向け)とDCG(データセンタ )が好調であったとザイリンクスは発表しています。

21-Q121-Q221-Q321-Q422-Q1
AIT326336359352319
ABC89121154152172
WWG234204233263264
DCG86106587585
その他-80-1939
合計727767803851879

“Record Q1 revenues were driven by strength in the Data Center end market, as well as a record quarters for our Industrial, Broadcast and Consumer end markets. This drove 3% sequential and 21% year-over-year growth,” said Brice Hill, Xilinx CFO

Xilinx Reports Fiscal First Quarter 2022 Results

 ABC(車載、放送、消費者向け) の売上は、21年の4四半期と今四半期において、特に順調に増加していることが分かります。

純利益/純損失

 過去3年の純利益は売上と異なり漸減トレンドです。

2019年2020年2021年
通年純利益(百万ドル)890793647

 今四半期(22-Q1)の純利益は前年同期(21-Q1)比+120.0%と大幅増でした。

21-Q122-Q1
四半期純利益(百万ドル)94206

 ただし「+120.0%」は純粋な事業利益増でない点に注意が必要です。

 今四半期(22-Q1)の営業利益は210(百万ドル)、前年同期(21-Q1)の 営業利益は 176 (百万ドル) だったので、営業利益ベースでは 前年同期(21-Q1)比+19.9%でした。

 今回、 純利益が大きく伸びた理由は見込み法人税の減少です。

  今四半期(22-Q1)の 見込み法人税(Provision for income taxes)は5( 百万ドル)、前年同期(21-Q1)の 見込み法人税は70( 百万ドル)でした。見込み法人税が減少した理由は、研究開発費用の税法上の取扱いに関する最高裁の判決(アルトリア税金事件のサーシオレイライを否決)を参酌したから(ザイリンクスはアルトリア税金事件の当事者ではないが、最高裁判決を尊重する立場にある)とうことのようです。

During fiscal 2021, the Supreme Court denied certiorari of the Ninth Circuit’s decision in the Altera tax case, which concerned related party R&D cost sharing arrangements and required stock-based compensation to be included in the pool of costs to be shared. While we are not a party to the case, we are subject to the findings.

5c96fb6a-564c-4603-a1cb-c330700c1507 (xilinx.com)

基本EPS

2019年2020年2021年
通年基本EPS(ドル)3.523.152.65

 過去3年の基本EPSは 過去3年の純利益と同様の傾向です。

21-Q122-Q1
四半期基本EPS(ドル)0.390.84

 今四半期の基本EPSは今四半期の純利益と同様の傾向です。

希薄化EPS

2019年2020年2021年
通年希薄化EPS(ドル)3.473.112.62

 この3年間、新株発行などの株主利益の希釈化はほとんどありません。

21-Q122-Q1
四半期基本EPS(ドル)0.380.83

 今四半期も 新株発行などの株主利益の希釈化はほとんどありません。

営業キャッシュフロー

2019年2020年2021年
通年営業キャッシュフロー(百万ドル)1,0911,1911,093

 営業キャッシュフローは、本業による収入と支出の差額を表します。

 過去3年にわたって、本業は順調です。

21-Q122-Q1
四半期 営業キャッシュフロー(百万ドル)245390

 今四半期においても、営業キャッシュフローは黒字であり、順調が維持されています。

投資キャッシュフロー

 投資キャッシュフローは、設備投資などによる資金流出と投資活動による資金の移動を表します。

 年度によって投資・回収の時期が異なることが分かります。

21-Q122-Q1
四半期 営業キャッシュフロー(百万ドル)-1,381389

 今四半期においては、投資よりもむしろ回収の方が程度が大きかったことが分かります。

財務キャッシュフロー

 財務キャッシュフローは、営業キャッシュフローと投資 キャッシュフローを調整するものでもあり、財務キャッシュフローは足りない資金をどのような手段で埋め合わせたかが分かります。継続して債務を返済していることがわかります。

21-Q122-Q1
四半期 営業キャッシュフロー(百万ドル)585-12

 今四半期においては、目立った財務キャッシュフローはありません。

バランスシート

 ザイリンクスの資産における負債比率が50%未満に抑えられています。財務は健全です。

配当

2019年2020年2021年
配当(ドル)1.441.481.14

 ザイリンクスは、配当もしっかり出しています。

 配当性向はおおよそ40~50%程度です。

21-Q122-Q1
四半期 配当(ドル)0.380.00

 今四半期は無配となりました。AMDによる合併が原因です。

(出典;Annual Reports | Financial Information | Investor Relations | Xilinx

今後の見通し

サプライチェーン

 今四半期決算において、ザイリンクスは現状のビジネス環境を次のように表しています。

While days of inventory are near historical lows due to the supply chain constraints, we expect inventory to remain relatively stable at current levels as some expected supply increases will be offset by continued strong customer demand.

COVID surges in Southeast Asia during Q1 resulted in higher quarter-end shipments to distributors resulting in transitory higher channel inventory.

Channel inventory levels decreased by the early part of fiscal Q2 as products shipped through to end customers, and remain lean. We are very proud of the effort and agility of our employees and partners in support of our customers

Xilinx Reports Fiscal First Quarter 2022 Results

 1)サプライチェーン制約により、在庫は歴史的な低水準にある。ただし、この水準でやや安定しそう。

 2)第1四半期は、東南アジアで新型コロナ感染が拡大。四半期末に流通量が増え、一時的に流通在庫は大きくなっている。

 3)第2四半期の初期、消費者に製品が流通したため、流通在庫は減少した。

 今後は、サプライチェーンの混乱の収まりと消費者のニーズの大きさに注目していく必要がありそうです。

配当

  今四半期決算において、ザイリンクスは 、配当方針を以下のように発表しています。

As required under the Merger Agreement, our quarterly dividends have been suspended until a date that is at least 12 months after the signing date of the Merger Agreement.

5c96fb6a-564c-4603-a1cb-c330700c1507 (xilinx.com)

 アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)はザイリンクスを買収しました(2020/10/26付け)。

 買収から少なくとも1年間、配当は停止されるそうです。

 早くとも2021年10月26日までは無配方針が継続されます。

アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)による買収

 (引用;AMD to Acquire Xilinx | AMD

 2015年、インテル(Intel)が アルテリアを買収しました。2020年10月、 AMDがザイリンクスを買収をしました。CPUの大手2社が FPGA大手2社を飲み込んだ形です。 AMDの買収の狙いはどこにあるのでしょうか。

 AMDとザイリンクスは、今後の半導体成長分野での拡大を目指していると報じられています。 今後の半導体成長分野として、データーセンター(data centers)、ゲーム(gaming)、パソコン(PCs)、通信(communications)、 車載(automotives)、航空・防衛(aerospace and defence)を挙げています。

 AMD and Xilinx plan to “capitalize on opportunities spanning some of the industry’s most important growth segments, including data centers, gaming, PCs, communications, automotive, industrial, aerospace and defense.”

AMD Acquisition of Xilinx Approved by Shareholders – TheStreet

株式

上場証券取引所、ティッカー

 ザイリンクスは、NASDAQに上場しています。ティッカーはXLNXです。

株価チャート

 長期にわたって大きく株価は上昇しています。

(出典;XLNX 167.15 1.34 0.81% : Xilinx, Inc. – Yahoo Finance

取扱い証券会社

 マネックス証券SBI証券でザイリンクスの株を売買できます。

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