米国巨大IT企業のGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)は、私たちの身近な存在となり、日常生活に溶け込んでいます。一方、動画投稿サイト「tiktok」、5G関連企業「Huawei」のスマートフォン、オンラインゲーム「荒野行動」など、様々な場面で「中国IT」のサービスや製品もよく聞くようになりました。
最近、ちらほら聞こえてくる「中国IT」の話題。「中国IT」を一通り知りたい方も多いのではないでしょうか。
中国IT企業の代表的な製品やサービスなどをざっと「体感してみる」のにぴったりな本をご紹介します。本書は、中国IT企業の「技術進化をリアルに知りたい」場合にもオススメです。
1. 世界を戦慄させるチャイノべーション |
2. 参考図書 |
世界を戦慄させるチャイノべーション
タイトル | 世界を戦慄させるチャイノべーション |
著者 | 日経ビジネス編 |
出版社 | 日経BPマーケティング |
発行日 | 2019年10月28日 |
本体価格 | 1,600円 |
ページ数 | 245ページ |
中国の巨大IT企業は「BATH」と呼ばれています。Baidu(バイドゥ)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)、Huawei(ファーウェイ)の4社です。これらはプラットフォーマーであり、このプラットフォームと連携するような形で様々な主要IT企業が活躍しています。
BATHに続く中国の主要IT企業(NEXT BATH)は「TDM」と呼ばれています。Toutiao(トウティアオ;バイトダンス)、Didi Chuxing(ディディチューシン)、Meituan(メイトゥアン)です。
本のポイント整理
1. (◎)中国ITの技術進化について、様々な角度から解説しています。
2. (○)代表的な中国IT企業の製品・サービスを紹介しています。
3. (×)個々の中国IT企業のビジネス戦略などについてはあまり説明されていません。
4. (×)中国政府のIT政策はあまり説明されていません。
5. (△)日米など他国と中国IT企業との関わりについてもあまり説明されていません。
6. (×)中国IT企業のこれからの課題についてはあまり説明されていません。
1. 中国の技術進化
中国IT企業の技術進化をリアルに知りたい場合には、事例や統計をあげてわかりやすく解説している本書をオススメします。例えば、半導体、AI、5Gなど特定のデジタル技術分野において、中国IT企業と日米企業を比べ、どの程度の技術差があるかなどを解説しています。
例えば、半導体の微細化技術や特許出願数などを指標に中国IT企業と外国企業を比較することで、中国IT企業がそれぞれの分野でどの程度の技術優位性があるかなどをわかりやすく理解できるようになっています。
2. 中国IT企業の製品・サービス
本書は、中国IT企業の代表的な製品やサービスなどをざっと「体感してみる」のにぴったりです。写真や図が豊富に用いられており、私のような素人でも初めて触れてわかるように工夫されています。
ただし、本書は、BATHとNEXT BAPTHの計7社の製品やサービスを満遍なく説明されているという感じではなく、初めて中国IT企業のビジネスに触れる読者でもそのインパクトや斬新さが体感できるように、日本IT企業のビジネスにはあまり見られないようなビジネスを特にとりあげて説明しています。
3. 中国企業のビジネス戦略
個々の中国IT企業について、規模、ビジネスモデル、買収提携戦略、中国政府との関係、社史、創業者、展望などの詳細はほとんど説明されていません。個々の中国IT企業について知りたい場合には、「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」や「中国デジタル・イノベーション ネット時代の競争地図(日本経済新聞出版)」がオススメです。
5. 中国IT企業と他国の関係
現在、米中は激しい争いを続けていますが、Huawei(ファーウェイ)に対する米国の制裁措置のニュースのように、米国VS中国IT企業の戦いが強くなってきました。本書は、この米国VS中国IT企業の戦いが熾烈になってきた原因を様々な識者の意見を交えてながら解説しています。この点は一読の価値がありそうです。
雑感
本書は、中国のIT技術がここまで進化している!、日本は大丈夫??、米中はIT技術の覇権を巡って大激突!、みたいな、やや週刊誌的な乗りで書かれているので、気軽な感覚で読むとちょうどいい気がします。
ページ数は200ページ強。文章も平易なので、3時間もあれば楽に読めます。
自己採点(満点:☆☆☆☆☆) | |
読みやすさ | ☆☆☆☆☆ |
分かりやすさ | ☆☆☆☆☆ |
お役立ち度 | ☆☆☆ |
ストーリーの一貫性 | ☆☆☆ |
推奨度 | ☆☆☆ |
参考図書
「中国デジタル・イノベーション ネット飽和時代の競争地図」岡野寿彦(日本経済新聞出版)
「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」趙 瑋琳 (東洋経済新報社)