前回の書評「世界を戦慄させるチャイノべーション」では、中国IT企業の技術進化をリアルに知りたい場合、中国IT企業の代表的な製品やサービスなどを一通りざっと体感してみたい場合ににぴったりな本と紹介しました。
本書は、個々の代表的な中国IT企業のビジネス戦略などを知るのに適しています。本書のページ数は250ページ強。文章も平易なので、中国ITを本格的に勉強したいという方にとって入門書としてオススメできます。

チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃
| タイトル | チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃 | 
| 著者 | 趙 瑋琳 | 
| 出版社 | 東洋経済新報社 | 
| 発行日 | 2021年2月4日 | 
| 本体価格 | 1,700円 | 
| ページ数 | 257ページ | 
中国の巨大IT企業は「BATH」と呼ばれています。Baidu(バイドゥ)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)、Huawei(ファーウェイ)の4社です。これらはプラットフォーマーであり、このプラットフォームと連携するような形で様々な主要IT企業が活躍しています。
BATHに続く中国の主要IT企業は「TDM」と呼ばれています。Toutiao(トウティアオ;バイトダンス)、Didi Chuxing(ディディチューシン)、Meituan (メイトゥアン)です。
各社の時価総額はGAFAに迫る勢いです。例えばこういう代表的な中国IT企業のビジネスの内容や戦略についてコンパクトに説明されています。
| NO | 国 | 企業名 | 上場証券取引所 | 時価総額 | 
| 1 | 中国 | Baidu(バイドゥ) | NASDAQ | 約7兆3,000億円 | 
| 2 | 中国 | Alibaba(アリババ) | NYSE | 約63兆円 | 
| 3 | 中国 | Tencent(テンセント) | 香港証券取引所 | 約82兆円 | 
| 4 | 中国 | Huawei(ファーウェイ) | 非上場 | ー | 
| 5 | 中国 | Toutiao(トウティアオ;バイトダンス) | 非上場 | ー | 
| 6 | 中国 | Didi Chuxing(ディディチューシン) | 非上場 | ー | 
| 7 | 中国 | Meituan (メイトゥアン) | 香港証券取引所 | 約26兆円 | 
| 8 | 米国 | Google(グーグル) | NASDAQ | 約182兆円 | 
| 9 | 米国 | Apple(アップル) | NASDAQ | 約239兆円 | 
| 10 | 米国 | Facebook(フェイスブック) | NASDAQ | 約105兆円 | 
| 11 | 米国 | Amazon(アマゾン) | NASDAQ | 約187兆円 | 
本書のポイント整理
1. (×)中国ITの技術進化について、あまり説明されていません。
2. (○)代表的な中国IT企業の製品・サービスを紹介しています。
3. (◎)個々の中国IT企業のビジネス戦略などについてコンパクトに解説されています。
4. (×)中国政府のIT政策はあまり説明されていません。
5. (×)日米など他国と中国IT企業との関わりについてもあまり説明されていません。
6. (×)中国IT企業のこれからの課題についてはあまり説明されていません。
中国IT企業の製品・サービス
中国IT企業7社の製品やサービスなどを万遍なく知るなら本書がオススメです。紹介している製品やサービスの会社に偏りがないので、BATHやNEXT BATH全体を概観できます。
中国のIT企業のビジネス戦略
前回の書評「世界を戦慄させるチャイノべーション」と比較すると、個々の代表的な中国IT企業のビジネス戦略などが簡潔に紹介されている点が特徴です。例えば、Baidu(バイドゥ)は、中国の検索プラットフォーマーですが、”劣勢のため、バイドゥは2014年頃から、多角化戦略へ舵を切りました”(引用)というように、製品やサービスの紹介の中で自然な形で紹介されていて、わかりやすいです。
| 自己採点(満点:☆☆☆☆☆) | |
| 読みやすさ | ☆☆☆☆☆ | 
| 分かりやすさ | ☆☆☆☆☆ | 
| お役立ち度 | ☆☆☆☆ | 
| ストーリーの一貫性 | ☆☆☆☆ | 
| 推奨度 | ☆☆☆☆ | 
参考図書
「世界を戦慄させるチャイノべーション」日経ビジネス編(日経BPマーケティング)
「中国デジタル・イノベーション ネット飽和時代の競争地図」岡野寿彦(日本経済新聞出版)
 
					         
                    