2020年3月、世界は新型コロナウイルスが大流行しました。人々の往来は制限され、在宅の時間が増えました。
でも、人々は変わらず病気をします。健康上の問題も消えません。新型コロナウイルスの流行をきっかけに、在宅ながら医療サービスを受けられる仕組みが大きく発展しました。オンライン診療企業ってどんなサービスを提供しているんだろう?オンライン診療企業のテラドックヘルスってどんな会社なんだろう?っていう疑問を持つ方もいるかもしれません。
当ブログでは、書評スピンアウトとして、興味深い会社を順次紹介しています。前回は米国IT企業「okta」。今回はテラドックヘルスを紹介します。
1. テラドックヘルスとは? |
2. 本社、CEO |
3. 事業内容 3.1 事業の概要 3.2 事業の特徴 |
4. ビジネスモデル 4.1 収入の中心:(A) ユーザのサブスクリプション手数料 4.2 収入の補助:(B) ユーザの利用手数料 |
5. エンドポイント |
6. 競合 |
7. 決算 |
8. 株価チャート |
テラドックヘルスとは?
(引用:Teladoc Health)
テラドックヘルスは、世界最大規模の米国・オンライン診療企業です。2015年、ニューヨーク証券取引所の上場しました。同社のロゴはパステルカラーで丸みを帯びています。ヘルスケアらしい優しい印象を与えます。
本社、CEO
(引用:Leadership – Teladoc Health)
本社はニューヨークにあります。CEOはジェイソン・ゴレヴィチ。2002年、医師らによって、テラドックヘルスはテキサス州で創業されました。その後、ジェイソン・ゴレヴィチが同社に加わり、現在のように大きな会社となったようです。ジェイソン・ゴレヴィチは創業者ではありません。年齢は48歳。写真のように若いCEOです。
従業員数は4,400名。約2900名が米国で、残りの約1,500名が米国以外で働いています。
(出典:Teladoc-Health-10K-2020.pdf (q4cdn.com))
事業内容
事業の概要
テラドックヘルスは、オンライン診療ITサービス(Web、アプリ)を営んでいます。テラドックヘルスの社員自身が患者の診療を行っているわけではなく、オンライン診療ITサービスに登録している外部の医師と患者をオンラインで結ぶITサービス(Web、アプリ)を提供しています。
患者はオンライン診療ITサービスに登録します。その際、名前や住所など個人情報だけでなく、これまでの健康情報も登録しておきます。これによって、オンライン診療ITサービスに登録している外部の医療従事者はオンライン上でも患者の健康状態を正確に把握することができます。
患者は、オンライン診療ITサービス上で、医師とオンライン医療相談するための予約をすることができます。当日、患者はWebやアプリを通じて、オンライン上で医師に医療相談をします。医師が処方箋薬が必要と判断すると、オンライン診療ITサービス上で処方箋を患者に発行し、患者はその処方箋を持参して薬局に向かって処方箋薬を購入することが出来ます。
テラドックヘルスのオンライン診療ITサービスでは、緊急性の高い病診療診療サービス対象外です。もし医師がオンライン診療中に緊急性が高いと判断する場合は、患者近くの病院に連絡します。患者はその病院に通院・入院することになります。
2020年、オンライン診療ITサービスの利用数は1,000万回を超えました。オンライン診療ITサービスに登録しているユーザ数は5100万人なので、登録ユーザの5人に4人は2020年にオンライン診療ITサービスを利用していなかったという計算になります。
事業の特徴
事業の特徴
・1年365日、24時間、オンライン診療ITサービスを利用できます。
・通院の手間や診察待ちをなくすことができます。
・メンタルヘルスにも対応しています。
・栄養サポート、皮膚疾患オンライン治療、小児オンライン医療もサービス内です。
ビジネスモデル
テラドックヘルスは誰から料金を支払ってもらっているのでしょうか。
収入の中心:(A) ユーザのサブスクリプション手数料
テラドックヘルスは「企業」からサブスクリプション手数料を徴収しています。このサブスクリプション手数料がテラドックヘルスの収入の殆どを占めます。
「企業」は、各従業員がテラドックヘルスのオンライン診療ITサービスを受けられるように、各従業員あたり毎月一定のサブスクリプション手数料をテラドックヘルスに支払います(上図の(A))。現時点で、各従業員あたり各月のサブスクリプション手数料は「$2.24(約250円)」です。各従業員あたり各月のサブスクリプション手数料は、PMPM(per member per month)と呼ばれています。
例えば、従業員1万人を抱える大企業は、毎年、10,000×$2.24×12ヶ月=$268,800(約3,000万円)をテラドックヘルスに対し支払っています。各従業員(ユーザ)のサブスクリプション手数料は各従業員(ユーザ)がオンライン診療ITサービス利用するのに必要な手数料ではなく、あくまで各従業員(ユーザ)がオンライン診療ITサービス利用登録にするのに必要な手数料です。
各従業員(ユーザ)のサブスクリプションは一種の医療保険だと考えると理解しやすいですね。
テラドックヘルスの売上を成長させるために、テラドックのオンライン診療ITサービスを従業員に与える契約を締結する会社を1社でも多く見つけることが大事であり、PMPM(per member per month)の増額をはかっていく必要があると思われます。そのために最も効果的な方策は「テラドックヘルスのオンライン診療ITサービスを魅力的なものにしていく」ということに尽きる気がします。テラドックのオンライン診療ITサービスが魅力的になればなるほど、テラドックヘルスと締結する会社は増えていき、PMPM(per member per month)の増額は許容されていくことになるでしょう。
収入の補助:(B) ユーザの利用手数料
テラドックヘルスは「利用者」からオンライン診療ITサービス利用手数料も徴収しています。この利用手数料はテラドックヘルスの収入の数割くらいに相当します。
オンライン診療ITサービス利用登録している従業員がユーザとしてオンライン診療ITサービスを利用するとその度に手数料が発生します。オンライン診療ITサービス利用登録していないユーザでもオンライン診療ITサービスを利用することはできますが、その度ごとに手数料が発生します。
エンドポイント
各ユーザは、Web、アプリ、電話いずれの方法でもオンライン診療ITサービスを利用することができます。
写真は、オンライン診療ITサービスの1つである「Best Doctors」。特定の疾患領域の専門医に治療中の内容をレビューしてもらう(セカンドオピニオンサービス)ことができます。スマホのアプリから簡単にアクセスできることはユーザ(患者)にとって便利です。
競合
会社 | 創業 | 従業員数 | 売上 | 時価総額 |
Amwell | 2006 | 527名 | 約2.45億ドル (2020年) | 約26億ドル |
テラドックヘルス | 2002 | 3,276名 | 約10.9億ドル(2020年) | 約230億ドル |
代表的な競合はAmwell(ニューヨーク証券取引所の上場:ティッカーはAMWL)です。Amwellのビジネスモデルは、テラドックヘルスのビジネスモデルと同じで、サブスクリプション手数料とシステム利用手数料の組み合わせです。
(出典:How does Amwell make money? (vator.tv))
決算
売上&利益
売上は綺麗な右肩上がり。2020年は赤字拡大しましたが、これはリボンゴ・ヘルスの買収によるものです。高成長の新興IT企業の財務戦略と同様に、テラドックヘルスも、今は利益にこだわるステージではなく、売上とシェア拡大に注力すべきと考えていると思われます。
資産
リボンゴ・ヘルスの買収によって、2020年に一気に総資本が膨らみました。今後、テラドックヘルスがリボンゴ・ヘルス買収による売上増加を図ることで、これだけ財務を大きくした正当性が証明されます。今後を見守る必要がありそうです。
(出典:Teladoc-Health-10K-2020.pdf (q4cdn.com))
株価チャート
(引用:Teladoc Health, Inc. (TDOC) Stock Price, News, Quote & History – Yahoo Finance)
売上と歩調を合わせるように株価が順調に推移しています。ワクチン接種の普及により、米国のコロナ感染者数は2021年1月にピークアウト。おそらくこれに合わせるような形で米国国民の在宅傾向の減少が予測されますが、もしかするとこういった予測が2021年1月以降の株価の落ち着きに影響を与えているかも知れません。