最近、”ビッグデータ”という言葉をよく聞きます。小売り店舗での顧客情報や商品の売上データ、世界中の気象情報、患者さんの検診データなど、毎日発生・蓄積される膨大なデータは ”ビッグデータ” と言われています。
今回、”ビッグデータ” を収集・分析するビジネスを展開するスプランクを紹介します。この記事を読むと、 ”ビッグデータ” の収集・分析 がどのような仕組みでビジネスになるのか?、スプランクとはどんな会社か?ということが分かります。
スプランクとは?
スプランクとは、一言で言えば、”機械と人間を結ぶ仲介人”です。
(引用:SAIC & Splunk as a Security Intelligence Platform | Splunk)
2003年に米国で設立されたました。スプランクは、サーバ、ネットワーク機器、医療機器など様々な機器やソフトウェアから発生する読み取り困難な膨大なデータ(”ビッグデータ”)を収集・分析し、人間が簡単に理解できる表示形式に変換するといったITサービスを提供しています。ロゴの「>」はこのようなデータ変換を表現しているのかもしれません。
下の写真が示すように、機器から生じるログは一目で”ぱっと”理解できるように構造化・整理されていません。しかし、例えば、 機器障害が起きた時、 機器管理者は、障害原因を突き止め、短時間に回復させる必要があります。
(引用:What Is Splunk? A Beginners Guide To Understanding Splunk | Edureka)
このような 時、 スプランク のITサービスは機器のログを 人間が簡単に理解できる表示形式に変換します。そうすることで、機器障害のリカバリーを手早く行えるようになります。下図のように、例えば、患者が利用する医療機器が生み出すデータを収集・分析(Data Processsing)し、患者や医師が理解できるようにモニターでグラフや表で可視化したりするサービスも スプランク のITサービスです。こうすることで、患者の状態が一目でぱっと分かります。
(引用:What Is Splunk? A Beginners Guide To Understanding Splunk | Edureka)
本社、CEO、従業員
本社はカリフォルニアにあります。CEOはDoug Merritt(ダグラス・メリット)。年齢は56。少し若く見えます。
2021/1/31時点で、従業員数は6,513名。4,638名が米国で働いて、残りの1,875名が米国外で勤務しています。
(出典:993ab50b-19d1-44b0-826b-071d82c77d87 (splunk.com))
製品・サービス
スプランク は、 ”ビッグデータ”を収集・分析し、人間が簡単に理解できる表示形式に変換するといったITサービスを提供していますが、様々な産業分野で様々にこのITサービスが実用化されています。ここでは、スプランク が提供するいくつかのITサービスの実例を紹介します。
SIEM(セキュリティ情報イベント管理)
インターネットの利用にあたり、ルーター、ファイアーウォール、DNSサーバなど、多くのセキュリティ機器やネットワーク機器が利用されています。これらの多くの機器のデータログを一元的に収集・管理・分析することで、機器をまたぐセキュリティの脅威を検出したり、取り除くシステムをSIEMと称しています。
スプランク のコア技術は、 多くの機器のデータログを一元的に収集・管理・分析 することなので、スプランクとSIEMの相性はとてもよく、 スプランク の SIEM製品が販売されています。
(引用:Dear Buttercup, To SIEM or not to SIEM; that is the Question | Splunk)
現在、単体の機器のデータログ を収集し分析してもセキュリティの脅威を十分に検知できなくなっています。そこで、 多くの機器のデータログを一元的に収集・管理 し、それらを関連付けて分析することで、初めて検知可能なセキュリティリスクもあります。このようなリスクを検知し、脅威を除去するようなシステムがSIEMです。
ETL(データを抽出、抽出したデータを変換、ソフトウェアサービスソフトウェアに渡す)
スプランク の コアコンピタンス は、 ”ビッグデータ”の収集・分析なので、その結果を他のソフトウェアサービスに渡すモジュールのような機能を提供する場合があります。
Apache財団 Hadoopは、大規模データの分散処理を支えるオープンソースのソフトウェアフレームワークです。 スプランク は Hadoop と協働して 大規模データ 処理を実装応用しています。
(引用:Hadoop and Splunk Use cases | Splunk)
スプランク のソフトウェアサービス(Splunk for Analysis)は、様々なデータソースが抱える大規模データを収集し、収集した大規模データを分析し、その結果を Hadoop に渡します。ここで、スプランク のソフトウェアは単独で処理が完結していませんが、上位アプリケーションの Hadoop から利用されるモジュールとして利用されています。
顧客
スプランクの顧客数は約20,000社です。
(出典: e646f112-57ca-4237-90af-89006746a2c3 (splunk.com))
決算(2020年)
売上
2016年から綺麗な右肩上がり。2020年度は約2,600億円。規模がだいぶ大きくなってきました。ここから成長が鈍化するか、あるいは成長が続くか、見守る必要がありそうです。
売上内訳
売上はライセンス料とメンテナンス料から構成されています。 スプランク はソフトウェアを販売しているのではなく、ソフトウェアサービス(SaaS)を販売しています。
ライセンス料は、新規顧客とソフトウェアサービスのライセンス契約を締結する時、既存顧客に追加的にソフトウェアサービス のライセンス契約を締結をする時などに顧客から頂く手数料です。メンテナンスサービス料は、スプランクの技術サポートやアップグレード費用に対応する手数料です。メンテナンスサービス料 には、クラウドサービス料やプロフェッショナル&トレーニング 料 も含まれます。
クラウドサービスは自社にソフトウェアを保有しなくてよい代わりにソフトウェアサービスです。自動車を保有せずシェアライドで済ます場合に自動車運転サービスを受けていると考えるとわかりやすいかもしれません。
複雑なIT環境を有する顧客に対してスプランクが技術的な補助をする場合、プロフェッショナル&トレーニング料といったメンテナンスサービス料が発生します。
スプランク はソフトウェア の売切りではなくてソフトウェアサービス手数料を継続的に頂くビジネスを展開しています。ストック型ビジネスといってよいと思います。
利益
利益はまだ赤字です。赤字が大きく増加していく傾向はなくコントロールされているように見えます。新興IT企業は規模拡大を優先し利益を後回しにする傾向があります。スプランク も他の新興IT企業と同様の財務戦略をとっているものと思われます。
資産
売上増加に合わせるように総資本も増加。自己資本比率は約40%です。 自己資本比率が過剰に低くならないように会社がコントロールしていることがうかがえます。
(出典:Annual Reports | Splunk Inc.)
株式
株価チャート
スプランク はNASDAQに上場しています。 ティッカーはSPLK。売上増加と共に株価も順調に推移しています。
(出典:Splunk Inc. (SPLK) Stock Price, News, Quote & History – Yahoo Finance)